高校野球の令和版を、全国に示した。仙台育英(宮城)が“投手王国”として甲子園初優勝をつかんだ。今大会は5人の投手が登板。全試合を継投で勝ち上がった。

野手出身の須江航監督(39)が「育てることにすごくこだわりを持ってきた」と語るのが、チームの生命線である投手陣だ。医者や理学療法士、トレーナーを含めたメディカルチームで、情報を共有し、計画的に育成を進める。

練習試合の先発ローテーションは、1カ月先まで決まっているプロ野球レベル。連投はしないように組まれている。県大会や甲子園でも大会前に、だいたいの投手起用法が伝えられる。そのため選手たちは普段通り、試合に向けての準備が計画的に行える環境だ。

練習は野手と完全に分け、自主性を重んじる。選手の中に「投手コーチ」を置き、中心となって練習メニューを組む。昨年、投手コーチを務めたのが最速149キロ右腕・伊藤樹投手(早大1年)。大枠の練習メニューは決めるが、内容は選手がそれぞれ選べる。さらに、お互いのブルペン投球の動画を見てアドバイスを送る。投手陣は20人以上。オーソドックスな上投げの選手が、生き残りをかけてサイドスローに転向するなど、人生をかけて勝負する。伊藤は「競争が激しいからこそ、生まれることが多い」と振り返る。

高いレベルでの切磋琢磨(せっさたくま)が、日本一へつながる道となった。

◆仙台育英 1905年(明38)創立の私立校。生徒数は3996人(女子1883人)。全日制は特別進学コース、外国語コースなどがあり、広域通信制もある。野球部は30年創部で部員数82人。甲子園出場は春14度、夏は29度目。主なOBは巨人松原聖弥、ソフトバンク上林誠知、ロッテ平沢大河ら。仙台市宮城野区宮城野2の4の1。加藤雄彦校長。