センバツに続き、審判員にもスポットライトの当たった大会だった。

決勝の球審を務めたのは尾崎泰輔氏。球児に寄り添う姿が印象的だった。試合中に声をかけたり、笑って背中をポンとたたくシーンがあった。

尾崎氏は開幕試合でも球審に入った。試合後の整列時。国学院栃木に敗れ、うなだれる日大三島(静岡)に「大丈夫、上を向け。甲子園で試合ができたことは誇りや」と諭してからゲームセットをコールした。

新型コロナ感染が広がり、主催者の異例の配慮で、第8日に初戦が組まれた浜田(島根)-有田工(佐賀)の整列時には「この試合ができたのは奇跡です」と語りかけた。

優勝決定後は速やかな整列を促し、全員がきれいに並び終わるまで時間をかけて待つと「終わります!」と声を張り上げた。

今春センバツ1回戦の敦賀気比(福井)-広陵(広島)では、二塁塁審のジャッジミスを認め、球審だった尾崎氏が場内アナウンスで「私たちの間違いでした。大変申し訳ありません」と謝罪。ミスがなかったらと仮定した状況からプレーを再開させ、関係者からも称賛を浴びていた。

また山口智久審判員もSNSなどで高校野球ファンの話題になった。一塁、三塁の塁審はスピーディーな試合進行のため、イニング間に守備に回る側のベンチへ近づき「追い出し」と呼ばれるかけ声を行う。山口審判員は「切り替えていこう」「ここが勝負どころ」「集中して」など、試合展開に応じた声かけで選手の背中を押した。

甲子園は高校球児の祭典。それを支える大人たちの温かな行動によって、晴れ舞台は彩りを増している。【柏原誠】