1次ラウンドもこの試合を含めて残り2試合となった。開幕から3連勝と順調な戦いを続けてきた中で、日刊スポーツ評論家の田村藤夫氏(62)は松尾汐恩捕手(大阪桐蔭)の総合力に注目した。

松尾はオーストラリア戦もバッティングは好調で、2安打2打点。守備でもこの日も含めて4試合、すべてで先発マスクをかぶってきた。この試合の5回表だけ野田と交代したが、ずっと試合に出続けている。味方投手陣のことがよく分かったのではないか。

この日も、見逃し三振を5個奪った。国際大会の中で打者の反応を見ながら、よく工夫してリードしていると感じる。見逃し三振を奪うには、狙い球を外さなければならない。そこには捕手として、打者を観察する力が求められる。確かに出場国によって打者の力量に差はあると感じるが、まずは投手の力量、性格をよく把握しながら、打者を攻略することが基本になる。

3回にオーストラリアの9番打者(右)、1番打者(右)を左腕吉村とのバッテリーで連続見逃し三振に打ち取った。9番打者は追い込んでから真ん中低めのスライダーを選択。打者はハーフスイング。判定はボール。やや泳いだスイングだったことを踏まえ、変化球に対する意識があると判断したのだろう。次の内角低めの真っすぐに打者は手が出なかった。

続く1番打者も追い込んでから膝元へのスライダーでカウント2-2に。打者の反応を見ながら、ここも内角真っすぐで見逃し三振に仕留めた。追い込まれれば、打者はストライクゾーンのボールには手を出す。そこで、前のボールへの反応、その打席での流れを加味する。勝負球で見逃しとすることができるのは、打者の狙い球を外しているからだ。

どういう流れでカウントを整え、最後にこうやって勝負して行こうというイメージが、松尾にはしっかりできていると感じる。ここまで4試合でマスクをかぶり7投手(のべ11投手)とバッテリーを組んだ。どういうリードをすべきか、この大会の中で判断材料がそろってきたと映る。

1次ラウンド最終戦の相手は台湾。日本はスーパーラウンド進出を決めており、最低でも台湾戦を含め、あと4試合を戦う。松尾にはここまでの情報の蓄積を持って、さらに臨機応変なリードが求められる。

おそらく、ベンチで、宿舎で、多くの投手と会話をしていると思う。投手があまり松尾のサインに首を振る場面が見られないのも、そうしたコミュニケーション力があるからだと感じる。ここからはより強豪チームとの対戦が続く。捕手松尾にとっても、やりがいのある試合になる。(日刊スポーツ評論家)

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