「夏秋制覇」に挑む! 第53回明治神宮野球大会(神宮)が今日18日に開幕。秋季東北大会を制した仙台育英(東北・宮城)は、3年ぶり8度目の出場を果たした。同大会に臨む5投手を紹介する「獅子の投手王国」第2回は、雪辱に燃える左腕、田中優飛(2年)と甲子園Vメンバーの最速146キロ右腕・湯田統真(2年)。2人は同校の校章に描かれているライオンのように秋の大舞台に向けて牙を磨いてきた。

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東北勢初の「日本一」を果たし、歓喜する仲間の姿が、田中にとってはまぶしすぎた。「正直、優勝した喜びよりも、悔しさの方が大きかった。『何で、自分はここにいるんだろう』」。決勝当日、田中はボールボーイを務めていた。聖地でプレーできないもどかしさを感じ、優勝を素直に喜べない自分がいた。

「夏の宮城大会、甲子園と優勝して、仲間が天に指をさしている瞬間を見ると、今すぐにでも自分が投げたい気持ちだった」

本格派左腕として横浜緑ボーイズから強豪の門をたたいた。1年春に公式戦デビューを飾ると、昨秋は投手陣で唯一となる1年生でメンバー入り。順調そのものだった。「正直、このまま、夏も自分が投げると思っていた」と明かした。だが、一冬を越え、新戦力が台頭してきた。中でも現エース高橋煌稀(2年)と湯田の成長ぶりは恐ろしく感じるほど。田中は過去の自分をこう振り返った。「考えの甘さが練習にもつながって…。結局、ベンチに入ることもできなかった。悔しさしかない」。

新チームになってから再び勝ち取った背番号。今秋は主にリリーフでチームの勝利に貢献した。田中は自らの立ち位置をこう分析する。「甲子園優勝を経験している投手が3人いて、自分が欲張って結果を出そうとしなくても、任された場所をきっちり抑えれば、後ろには良い投手がいる」。だが、夏に芽生えた反骨心はそう簡単には消えない。「3人(高橋、仁田、湯田)頼みでは勝てない。3人に追いついて追い越す存在になりたい」と闘志を燃やす。

果敢に挑む。神宮に向け「何も恐れることはない。レベルの高い打者に真っ向から向かっていきたい」と意気込んだ。再起をかける最速145キロサウスポーが、秋の大舞台で確かな結果を残す。

【佐藤究】