<明治神宮大会:大阪桐蔭12-2クラーク>◇高校の部準々決勝◇20日◇神宮

明治神宮大会で20日、連覇を狙う大阪桐蔭(近畿)が、試合中にクラーク(北海道)の佐々木啓司監督(66)から直接注意を受ける、異例の一幕があった。

2回の大阪桐蔭の攻撃中、ベンチから大声を出す大阪桐蔭に向かって同監督が「いつまで声を出しているんだ。ピッチャーが投げているのに」と注意した。投球動作中の大声は投球の妨げやボークを誘う可能性があり、審判が注意することがある。大阪桐蔭はコールド勝ちで準決勝に進んだ。

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神宮の記者席はバックネット裏にあり、目線はグラウンドレベル。わずか十数メートル先にある両側ベンチの声が臨場感たっぷりに聞こえる。ベンチ同士の距離も近い。クラーク・佐々木監督の声は、大阪桐蔭側にも明確に伝わった。

この試合、両校とも活発に声を出し、記者は好印象も抱いていた。ただ、大阪桐蔭が相手の投球動作時も大声を出していたのは事実。次の試合の北陸・林監督もこの一件を知っていたようで、試合中に「投球中は控えよう」と促した。

走っていないのに「走った」と言うなど、ボークを誘発するための行為は禁止されている。その規則を拡大し、投手を惑わすための行為全般がマナー違反とされているのが実情。言葉の内容に関係なく、投球中の「大声」は幻惑行為に含まれるという解釈だ。

投手を動揺させる行動は常とう手段だったが、いつしかマナー違反に変わった。19年センバツでサイン伝達疑惑が取り沙汰され、フェアプレー順守が広く球界に伝わった影響もあると、記者は思っている。

突然相手サイドから注意を受けた大阪桐蔭の選手は互いに顔を見合わせ、一様に驚いているように見えた。他のマナー違反と同じように、本来は審判が自身の裁量で当該チームに注意を与えている。佐々木監督も、審判を通じて指摘する方法もあったはずだ。

興味深いのは新型コロナとの関連性だ。ある審判員によるとコロナ前は吹奏楽や歓声で騒がしく、ベンチの声もあまり気にならなかったという。今回の一件も含めて「近年はダイレクトに声が聞こえるようになったからではないか」と推測した。確かに応援行為が一切ない今回の神宮大会も球場が静かだ。

マナーの問題なので、どこまで許されるかはグレー。また、高校・大学とも各地域、団体で認識に差があるといい、足並みをそろえる必要もある。投球時の声出し禁止を内規に定める東都大学リーグのように、明文化することがやはり望ましい。【アマ野球担当 柏原誠】

○…東都大学野球連盟では、内規で試合中の声出しについて明記している。投手がセットポジションに入った瞬間から、ベンチにいる選手がどんな内容であっても声を出すことは禁止されている。監督を通じて各チームの選手に伝達されているという。