史上5校目の「夏春連覇」に挑む仙台育英(宮城)が、今大会初のタイブレークの末、慶応(神奈川)に延長10回サヨナラ勝ちを収めた。山田脩也主将(3年)が決勝の適時打を放ち、劇的勝利で3回戦進出を決めた。

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山田主将の一打が、歓喜をもたらした。1-1の10回表2死満塁を無失点で切り抜け、1点でも取れば勝利が決まる同裏。1死満塁で熊谷禅外野手(2年)が放った打球は左翼前に落ちたが、好返球で三走が本塁で封殺。甲子園が沸き、嫌な流れが漂う中、背番号「6」は1球に集中した。

「自分がここで決めないと、今まで積み上げてきたものが失ってしまうと思った。執念で打った」

仙台育英の“魔曲”である「純情(スンジョン)」が響く中、初球のスライダーをさばき、打球は左翼線へ。勝利を確信しながら一塁に走りだすと、ベンチに向かってガッツポーズ。最高の笑顔を見せた。

一瞬のミスが命取りのタイブレーク。短期決戦を制するための対策は入念にしてきた。須江航監督(39)は「僕らは打てるチームじゃない。僕らが表のパターンと裏のパターンをやり続けた。表ならアグレッシブに2点以上取る野球。裏なら表の失点の中で求められる点数に対する野球。詰めて詰めてやってきたので、非常に冷静だったと思います」とねぎらった。

昨夏の主力が残り、優勝候補に挙げられる今大会。山田は「プレッシャーは特に感じていないが、夏春連覇は本気で狙っていきたい。1つ1つ丁寧に戦わないと頂点は見えてこないので、一戦必勝をテーマに掲げたい」と地に足をつける。悲願を成し遂げた22年8月22日以来の甲子園。先を見据えず、2度目の初優勝に突き進む。【相沢孔志】

◆夏春連覇へ 昨夏優勝の仙台育英が勝利。夏の優勝校が翌年春に出場するのは、00年履正社(大会中止も出場回数はカウント)以来、延べ39校目。初戦成績は試合のなかった00年履正社を除き、27勝11敗(勝率7割1分1厘)。夏春連覇は31年広島商、38年中京商、61年法政二、83年池田の4校が達成している。

◆仙台育英が東北勢初の6連勝 昨夏の覇者仙台育英が勝利。これで昨夏の5勝と合わせ甲子園通算6連勝。東北勢で6連勝した学校は史上初。過去の東北勢では5連勝が最長で、いずれも夏の1回戦から決勝に進んだ89年仙台育英、03年東北、15年仙台育英、18年金足農が記録していた。

◆タイブレーク 甲子園では18年春から導入され、昨年夏まで延長12回を終え同点の場合、13回から実施していた。今大会から開始イニングを延長10回に変更。無死一、二塁から始め、打順は9回終了後から継続。これまで春に4度、夏に3度実施された。決勝でも採用する。1人の投手が15回を超えて投げることはできない。

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