【台北(台湾)3日=柏原誠、保坂恭子】日本のエースが仁王立ちした。

ドラフト候補左腕の前田悠吾投手(3年=大阪桐蔭)が、前回王者米国との大一番に先発。力強い直球と多彩な変化球で強力打線を寄せ付けず、5回2/3を無失点。誤審騒動にも動じず、8奪三振と圧倒した。日本は継投で米国の猛反撃をかわし、B組唯一の3連勝。1次ラウンド1位通過へ大前進した。今日4日のベネズエラ戦に勝てばスーパーラウンド進出が決まる。

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台風11号による横なぐりの雨にも、前田の表情は変わらない。相手がライバル米国であっても臆することはなかった。「体は大きかったけど同じ高校生。気持ちで負けるつもりはなかった。『やったろう』って。なかなか米国とは対戦できないのでワクワクしていた。相手を見下ろして、最後まで投げられました」。

初回に2点を先制。あとは抑えるだけだ。強い逆風でも必殺チェンジアップのブレーキは十分。相手の変化球狙いを察すると、チェンジアップの中でも緩急をつけたりと技巧をこらした。最速144キロの速球でも空振りを奪った。「いろいろなバリエーションをつけて、流れを渡さない投球ができました」。台風直撃で試合ができるか分からず、当日に開始時刻が何度も変わった。そんな悪条件下で、背番号18のサムライが野球大国をねじ伏せた。

大阪大会決勝で履正社に敗戦。世代NO・1と言われながら不完全燃焼に終わった。すぐに退寮し滋賀の実家に戻ったが、1週間で寮に戻った。上体のバランス矯正のため、セットポジション投法に変更。二段モーション気味に右足の上げ方を変えた。「世界一」を目指して進化を求めた。

最大のピンチは4回無死二塁。自ら投ゴロをさばき併殺に持ち込んだ。だが判定が二転三転。場内騒然の中で待たされたが「近くで見て併殺と分かっていたので」と動じなかった。

今日4日、ベネズエラに勝てばスーパーラウンド進出だ。「いい流れのまま勝ち進みたいです」。悲願の初優勝へ。今年の侍ジャパンには前田がいる。【柏原誠】

▽日本・前田(6回途中4安打無失点、8奪三振の好投)「ずっと気持ちを作って米国戦に合わせてきた。いろいろな球種、配球を使って流れを渡さない投球ができた。明日からもいい流れで勝ち進みたい」

▽日本ハム稲葉GM(前田について)「体の大きい米国を相手に、悪条件の中で自分の球も気持ちもコントロールしていて、素晴らしい。国際大会はいろいろなことが起こる中で、動じない、精神的な強さがある」

▽ソフトバンク福山スカウト部チーフ(前田について)「曲がり球、抜く球のコンビネーションなど持ち味を発揮していた。ここまでセンスのあるタイプはなかなかいない。ボディーコントロールや強弱の付け方など、高校生のレベルではない」