高校野球で春夏通算5度の甲子園優勝を誇る横浜(神奈川)の卒業式が1日、行われた。

昨夏は甲子園Vの慶応に、県大会決勝で逆転負け。ベース踏み忘れ判定が、大きな波紋を呼んだ。7カ月前に悔しさにまみれたナインへの、村田浩明監督(37)からの“贈る言葉”は? 最後のミーティングに潜入した。【金子真仁】

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卒業式を終え、横浜スタジアムの近くで謝恩会が行われた。会の序盤、村田監督がマイクを持つ。

「今、大学受験で最後まで戦っている選手がいます。チャレンジしてくれることがうれしい。それぞれの道を迷わず進んだ先で、絶対にまたどこかで会うことがあると思います。互いに絶対負けないように」

23年7月26日、泣き崩れた。県大会決勝、2点リードの9回無死一塁。二塁へのゴロで遊撃の緒方漣主将(3年)が併殺を狙う際、ベースを「踏んでいない」と判定されオールセーフ。その後逆転3ランを喫し、そのまま敗れた。

18歳で中日涌井とバッテリーを組んだ村田監督は、20年春から母校再建を託される。今回の卒業生は入学前からチェックしてきた、初めての世代になる。それもあって「落ちましたね。相当、落ちました」と夏を振り返る。ただ、恨むことは力にならない。卒業生に伝えたいことは。

「野球って、人がしっかりしてないと人のことをかえせないし、人のことを分かってないと絶対に勝てない。人を大事に、親を大事に、仲間を大事に。そして、そういう選手たちが横浜高校を大事にしてくれるのかなって思っています」

謝恩会がお開きになり、来賓を見送った村田監督が「3年生集合!」と呼んだ。最後の、贈る言葉。

「これでお別れという形になるけども、あんまり実感がなくて。また明日もいるんじゃないかなって感じなんだけども。オレもね、正直ね、いろいろつらかった。勝たなきゃいけないし、1期生だし絶対甲子園連れてこうって思ってたよ。それが空回りしちゃうとか、いろんなことあったけど、そんな時にいろいろな人に助けてもらって。君たちとともに成長できました。これからね、ほんとにね、オレ、期待してるから。それぞれの道をしっかり歩んで、自信持って行けよ、絶対に。何のために横浜高校でやってきたか。とにかく絶対負けんなよ。3年後4年後、プロや社会人、日本代表、いろいろな世界で君たちの活躍を本当に楽しみにしてるから。絶対に間違った道に行かないように。なんかあったら、言いに来い。絶対に人生を棒に振っちゃだめ。ここまでやってきたんだから。みんな頑張れよ。本当にありがとう」

呼応の「ありがとうございました!」が響くのもこれが最後。卒業式前夜に「泣けてきますよ…」とこぼした村田監督は、最後までこらえきった。