<高校野球青森大会>◇13日◇開会式

 青森では東日本大震災で祖母、母、兄2人を亡くした岩手・陸前高田市出身の松風塾女子マネジャー・平坂保美(2年)が、開会式で司会の大役を務めた。

 平坂の声が青空に響き渡った。司会進行の2人のうち、平坂は入場行進を担当。出場73校の校名を次々とアナウンスした。「松風塾高校!」自分の学校名も高らかに告げた。「目の前で見たのは初めて。立派な行進だった。自分は1カ所間違えてしまった」と笑顔を見せた。

 3月11日、震災で家族4人を亡くした。父博保さん(49)は東京で仕事をしていて無事だった。長兄は北海道の大学から帰省中。次兄は福島の大学進学を前に、実家で被災した。その後平坂は父とともに陸前高田市に入り、4人の遺体と対面した。

 「正直、悲しみを克服できていない。でも家族のような野球部の仲間がいる。頑張ろうと思った」。一時は学校をやめることも考えた。だが離れている時も、ナインが激励の手紙をくれた。開会式の司会が決まってからは、拡声器を使っての練習を聞いてくれた。松風塾は全寮制で、まさに家族の一体感があった。

 試合ではベンチに記録員として入る。「1人1人の選手が、野球ができることに感謝して、みんなに元気を与えるプレーをしてほしい」。将来は祖母と母芳子さん(享年55)と同じ美容師を目指す。

 一生忘れない今年の春と夏。平坂は亡き家族に心の中でこう声を掛けた。「いつも見守ってくれてありがとう」。【北村宏平】