<高校野球北北海道大会:旭川工7-3稚内>◇16日◇1回戦

 開幕試合で、旭川工が毎回の12安打を放ち、稚内を7-3で下し、6年ぶりの夏甲子園へ好発進した。礼文島出身で、3安打の4番三津谷俊亮一塁手、先発マスクの川村勇大捕手(ともに3年)は、礼文香深中で同級生だった稚内の石動絢輝三塁手、小沢泰一左翼手(ともに3年)とグラウンドで再会。旧友の思いも力に大舞台を目指す。

 試合終了から約1時間。スタンドで試合を観戦していた旭川工の4番三津谷は、突然の訪問者に思わず口元を緩めた。対戦相手だった稚内の石動と小沢だった。2人は小、中学校時代の同級生。手にはベンチに持ち込んでいた千羽鶴があった。甲子園への思いがこもったプレゼント。三津谷は「うれしいですね」と照れくさそうに笑った。

 09年春。礼文島の香深港には、旭川に出発する三津谷と川村がいた。甲子園を目指して旭川工入学を決意した2人を見送るため、石動と小沢も港に駆けつけた。4人は約束した。「いつか公式戦で試合をしよう」。大舞台での再開を誓い、港を離れる船から、そして岸壁からお互いに手を振った。

 あれから2年半。最後の夏に4人の思いが結実し、開幕戦での直接対戦が決まった。組み合わせ抽選会が行われた7日夜、電話とメールで連絡を取り合った。稚内の小沢は「運命というか奇跡。お互いにレギュラーを取り、地区を突破することも難しい。それが全道で再会できるなんて」と思いを口にした。

 試合は旭川工が毎回の12安打を放ち、初戦を突破した。三津谷は3安打1打点。幼なじみの前で4番としての仕事を果たした。試合後の整列では2人を見つけ、握手した。「ベース上でもナイスバッティングと声をかけられた。対戦できて良かった」。川村も、石動も、小沢も1安打。結果は明暗を分けたが、友情はより強固になった。

 18日の準々決勝で旭川工は駒大岩見沢と対戦する。旧友からもパワーをもらった三津谷は「目指すところはもっと上。今日は動きが悪かったので次までに修正したい」と、反省も忘れなかった。友の思いを力に変えて6年ぶりの甲子園をつかみとる。【石井克】