<高校野球北北海道大会:帯広農6-0帯広工>◇十勝地区代表決定戦◇6月30日◇帯広の森

 帯広農がエース室崎佑斗(3年)の2安打完封で帯広工を下し、2年ぶりの北大会出場を勝ち取った。

 抜群の制球力で、十勝の怪腕が笑顔の快投劇を見せた。帯広農の室崎は7回まで無安打投球も、8回先頭の帯広工エース宮川浩彰(3年)に右前へ運ばれた。「自信のあるボールだったので。悔しさはありません」。終わってみれば、わずか2安打完封。大久保聡彦監督(50)が「3年間で一番いい投球だった」とたたえる快投だった。

 信条は、どんな時でもスマイルだ。最大のピンチだった7回表。3四死球で満塁とされ、内野手がマウンドに集まり伝令が送られた。輪がとけると、室崎はなぜか笑顔満開になった。「(ピンチで)不安な表情を出したくないし、無表情も自分は難しい。笑っていたほうが、相手にも(自分の気持ちが)分からないと思うので」。弱気な表情は一切出さず、次の打者を空振り三振。雄たけびとガッツポーズまで飛び出し、最後まで流れを渡さなかった。

 直球の最速は128キロながら、内外角を丁寧に突く粘りの投球が身上だ。今春には緩急をつけようとスローカーブに取り組んだ。この日も何球か投じたが、すっぽ抜けて2死球。「北大会までに精度を上げていきたい」と、真面目に課題を話した後に「スピードも、もうちょっと上がれば」と笑いを誘った。

 昨年の十勝地区代表決定戦では2年生ながらエースとして先発。甲子園に出場した白樺学園と1-2の接戦を演じた。この日、室崎の投球を見た白樺学園の戸出直樹監督(36)は「去年一番苦しめられた。崩れない投手ですね」と警戒を強めた。

 室崎は「去年の先輩のためにもリベンジしたい」。この日、ともに北大会進出を決めた同地区の雄に、大舞台で借りを返す。【木下大輔】