<高校野球宮城大会:石巻商7-0仙台高専名取>◇10日◇2回戦◇南郷

 今度は俺たちの番だ!

 石巻商の首藤桂太投手(3年)が7回2安打10三振で完封。春は故障で登板がなかった身長160センチの小さな右腕が完全復活した。今日11日で東日本大震災から1年4カ月。昨秋、センバツへの夢を断たれた石巻商の、リベンジを誓う夏が始まった。

 マウンドにエースが戻ってきた。石巻商の夏は、首藤の3者連続三振で幕を開けた。思い切り腕を振り、キレ味抜群のスライダーを武器に7回10奪三振。わずか2安打に抑えて完封した。昨秋以来の公式戦登板での快投にも「納得いく球はあったが、高めに浮いてしまった。まだ60点くらい」と満足していない。

 春は右ふくらはぎ肉離れで棒に振った。4月中旬の練習中に違和感を訴え全治1、2週間と言われた。しかし状態が戻らず、実戦に復帰できたのは開幕3週間前の6月中旬。「夏投げられるのか」と焦りもあった。練習試合で少しずつイニングを増やし、投球不足で乱れたフォームは試合2日前に修正した。水沼武晴監督(50)は「間に合って良かった」と胸をなで下ろした。

 震災後、学校周辺にむき出しで積まれていた大量のがれきは、現在は袋に包まれている。練習中もマスク着用を義務づけられたほどの粉じんや、異常発生した虫もほとんどいなくなった。有害物質も検出されず「環境はだいぶ良くなった」と監督。支援を受けた県外の高校には感謝の意を込め、交流会を開いたり遠征に出掛けたりしているという。

 石巻工にリベンジしたい-。それだけを考えて夏に挑んでいる。仙台育英を破り勢いに乗った昨秋の県大会。準決勝で石巻工に敗れ、センバツへの夢を絶たれた。大舞台に立ったライバルを見た首藤は「いまだに悔しさを思い出す」という。8日の開会式では石巻工・奥津庸介内野手(3年)と「お互いがんばろうな」と声を掛け合った。「決勝で石巻対決を制して甲子園に行きたい」。チームの思いは1つだ。【鹿野雄太】