<高校野球兵庫大会:神戸国際大付7-0神戸鈴蘭台>◇11日◇1回戦◇ベイコム

 上を目指す志が、実った。神戸国際大付の5番武市(たけいち)が公式戦初アーチを左翼ポール際に運んだ。ユニホームを着てベンチ入りする最初で最後の大会。5回に2点を追加する1発で、7回コールドの快勝発進に貢献した。

 「バットの先だったので、入ってほしいと思って走った。公式戦で打てて、よかった」

 1年秋に右足首を痛めるなど故障がちでレギュラーと縁遠かった。一念発起し、1月から午後9時まで居残る自主練習を日課にした。素振りとティー打撃で徹底的に振り込む。打ち損じていた球をしっかり捉えられる実感があった。練習試合で結果を出し、7月上旬には今春センバツで勝ち投手になった智弁学園(奈良)青山大紀から2打点。念願の背番号「15」のユニホームを与えられ、5番左翼での先発はこの日の朝、告げられた。

 武市という名で、タケチと呼ばれることが多い。「地理の先生に『半平太か』と言われて、どんな人だったか教わった」。坂本龍馬、中岡慎太郎らを集って土佐勤王党を結成した英傑、武市半平太の志がだぶる。公式戦で1度もベンチ入りしないまま高校野球を終えるわけにはいかない。雑草魂でかけたアーチだった。

 「3年生だけでミーティングして、頑張らなダメだと」。プロも注目する大型捕手の宗接唯人(むねつぐ・ゆいと)だけが目立っていた最上級生。武市の成長に青木尚龍監督(47)も「ここに来て伸びた。大きい」と頼もしく見つめる。「半平太」の下克上は始まったばかりだ。

 ◆武市誠(たけいち・まこと)1994年(平6)5月23日、兵庫・神戸市生まれ。雲中小3年で軟式野球を始める。葺合中で神戸中央シニアに所属し、外野手として7本塁打。神戸国際大付では練習試合で通算10本塁打。181センチ、78キロ。右投げ右打ち。