<高校野球岩手大会:大槌1-0盛岡北>11日◇3回戦◇森山総合運動公園

 「三陸の鉄腕」襲名だ。大槌のエース岡谷惇喜主将(3年)が、盛岡北を7安打完封。9日の盛岡農戦で延長15回226球を投げていたが、気迫あふれる投球でチームを4年ぶりの4回戦に導いた。

 燃え上がるような熱い心と、冷静な頭を持ち合わせていた。226球の死闘から中1日。1-0で迎えた9回1死満塁のピンチにも、岡谷は動じなかった。三塁走者のスタートを確認すると、とっさにウエストしてスクイズを阻止。最後までマウンドに立ち、虎の子の1点を守り抜いた。「今日の方が調子が良かった」と涼しい顔のエースを、応援席で舞う大漁旗と全校生徒が祝福した。

 どん底からはい上がってきた。昨秋、今春と県大会初戦敗退。昨年最後の練習試合では、光星学院(青森)に1-21と大敗した。佐々木雄洋監督(31)は、駒大苫小牧(北海道)や今春センバツに出場した早鞆(山口)など強豪校の指導陣と接し、1点に対する執着心を選手に植え付けてきた。盛岡農との2回戦は、0-5からの大逆転勝利。この日も相手(7安打)の半分以下の3安打で勝利し「そういう練習をしてきた。よくやった」。試合後は、選手とともに指を突き上げ「失礼かもしれませんが、ずっと勝てなかったチームなので」と4年ぶりの4回戦に向けて一体感をさらに強めた。

 1年生9人が入部するまで、部員はわずか12人だった。大半が震災で自宅を失い、1年生の多くも仮設住宅から通う。2番柏崎翔大内野手(1年)は「大槌で強くなって町を元気にしようとみんなで話して入った」と上級生の背中を追う。岡谷は「沿岸の端っこにある小さな学校でも、勝てるというのを見せたい。応援してくれる地元のためにも」とガムシャラに腕を振る。前チームからの目標は「大革命」。鉄腕エースを中心に、この言葉を胸張って言えるだけの力と勢いが、今の大槌にはある。【今井恵太】