<高校野球岩手大会:花北青雲6-3久慈>◇14日◇3回戦◇岩手県営球場

 花北青雲が久慈を下し、岩手で22年ぶりとなった延長引き分け再試合を制した。9回に追い上げられたが、晴山光(2年)から大矢明(3年)へのリレーで逃げ切った。92年センバツに宮古の主将として出場し、松井秀喜(38=現レイズ)擁する星稜(石川)と対戦した沢田靖永監督(37)が4月に赴任。甲子園を知る男の下、11年ぶりの16強入りを決めた。

 延長15回引き分けから24時間後、応援席に笑顔で駆けだしたのは花北青雲だった。9回2死二、三塁。久保田圭一主将(3年)は遊飛をつかむと、捕球体勢のまま本塁へダッシュした。計5時間52分戦っての勝利。沢田監督は「この自信を胸に次の試合に向かいたい」と、死闘を制した選手をねぎらった。

 久慈がオーダーを動かしてきたのに対し「昨日からの流れを大事にしたい」と下位打線を入れ替える程度にとどめた。采配は見事にはまる。前日の8回、一時勝ち越しのソロを放っていた4番伊藤大樹捕手(3年)が、3安打3打点。同じく9回を投げていた晴山も「今日の方が制球が良かった」と8回1/3を3失点と粘投した。

 16強入りは、8強だった01年以来。チームを変えたのは、4月に赴任した沢田監督だった。92年センバツに宮古の主将として出場。星稜・松井に2本塁打を浴びて3-9で敗れたが、先攻後攻を決めるじゃんけんでは勝っていた。「(久保田主将は)負けてばかりだから、コツを教えたりもします。ハッタリですけど(笑い)」。久慈には“2連勝”で、後攻を選択。冗談を交えて選手を乗せつつ「たかがじゃんけんだけど、勝つことにこだわるのが大事」と1球の大切さ、勝利への執着心を説く。「練習の質が上がった」という久保田主将ら選手の目も、本気になっていった。

 沢田監督は「県大会は長打ゼロで勝って、秋の東北大会。それで甲子園。強くなかったけど、似てるんです。あの時に」と、粘り強く戦う教え子を現役時代に重ねる。「あの時」にまだ生まれていなかった選手たちは、激闘を乗り越えて聖地にまた1歩近づいた。【今井恵太】

 ◆沢田靖永(さわだ・のぶひさ)1975年(昭50)1月1日、岩手県生まれ。宮古の主将として、92年センバツに出場。卒業後は、岩手大教育学部に進学。花巻農、岩泉田野畑、久慈水産(現久慈東)で監督を務め、04年から今年3月まで宮古商の部長、監督を務めた。