<高校野球福島大会:修明8-4浪江>◇14日◇1回戦◇いわきグリーンスタジアム

 浪江は最後まであきらめなかった。3年生部員10人だけで修明と対戦。2度追いつき、7回には一時逆転したが、8回に5点を奪われ力尽きた。チームは秋以降の休部が決定。最後の試合を終えた選手たちは、大粒の涙を流した。

 最後まであきらめなかった。4点を追う9回、「まだ終わってないぞ!」と、最後の攻撃に懸けた。すると2死から連打と相手の暴投で二、三塁。しかし、大友裕太投手(3年)が遊ゴロに倒れ、戦いは終わった。選手は号泣し、紺野勇樹監督(30)も目に涙を浮かべた。加藤裕樹主将(3年)は「悔いはありません」と言葉を振り絞った。

 10人がすべてを出し切った。2点を先制されても追いついた。再び勝ち越されて迎えた2-3の7回には、1死満塁から押し出し死球で再び同点。さらに大友裕が勝ち越しの右犠飛を放った。スタンドに駆けつけた全校生徒と関係者、保護者やOBも喜びを爆発させた。

 しかし8回裏に再び追いつかれた。さらに2死満塁から中越えのランニング満塁本塁打で引き離された。それでも最後まで攻めた。監督も「選手は立派。執念を感じた」とあきらめない姿勢をたたえた。

 震災の直後、当時の2年生3人が退部した。入部予定だった約10人もユニホームを着ることはなかった。今年も新入部員はゼロ。学校全体の入学者もわずか7人で、全校生徒も76人に減った。昨年はサテライト先が安達、好間に分かれていたが、今年4月からは仮設校舎が完成した本宮に集約された。選手たちは合同練習で必死に白球を追った。加藤は「10人でやってきた練習は最高の宝物」と3年間を振り返った。

 秋以降は休部が決まった。高梨洋史校長(58)は「来年の新入生の状況を見て(活動再開を)考えるが、望みは少ない」と廃部も示唆した。紺野監督は「連合という形でも、1人でも浪江のユニホームを着てくれる子が来てほしい」。浪江野球部は25年の歴史にいったん幕を閉じた。【鹿野雄太】