<高校野球南北海道大会:札幌龍谷学園9-2北海道尚志学園>◇16日◇1回戦◇札幌円山

 南北海道の開幕戦で札幌龍谷学園が7回コールドで北海道尚志学園を破り、初出場勝利を挙げた。エース蓑田広一(3年)が6回2/3を7安打2失点と要所を締める投球を披露。打線も10安打9得点とソツのない攻撃で札幌対決を制した。

 初陣の札幌龍谷学園が、甲子園経験のある北海道尚志学園を振り切り、歴史的1歩を踏み出した。大黒柱の蓑田投手は初回、先頭打者にいきなり内野安打を浴びたが、粘りの投球で勝利を呼び込んだ。4回表に2失点も、3回までに大量8点を奪った打線の援護を受けた。投打がかみ合っての勝利に蓑田は「南大会で勝てたのは本当にうれしい。味方が点を取ってくれたのが大きかった」と笑顔を見せた。

 開会式直後の試合を想定し、大会1週間前から練習開始20分間は、投手陣だけ直立したまま待機してから投球を開始する“開幕戦シミュレーション”を徹底した。当日の行動に即したアイデアが奏功し、寺西直貴監督(41)は「蓑田の制球が乱れなかったのが大きい。少しブレても、試合中に落ち着いて修正していたのが良かった」と振り返った。

 「ダメだし」も効いた。3季通じて初の全道出場を果たした昨秋から、主将の谷田健捕手(3年)がイニングごとに蓑田の課題を指摘するのが恒例となった。この日も初回に「ボールが高い」、ボークを取られた3回はマウンドに駆け寄り「リズムがおかしい」と差し込んだ。「あのダメだしがあるから、落ち着いて投げられた」と蓑田は言った。

 スタンドで応援した父剛さん(50)は「この人について行くと決めたら、とことんついて行く子。私にも逆らったことは1度もない。真っすぐなところがある」と言う。バッテリー間の信頼と、エースの実直な性格が絶妙にかみ合い、好投に結びついた。

 普段は寮生活だが、前日15日は父剛さんと札幌市内のレストランに出向き、好物で“勝負飯”のチキンソテーを食べた。「肉を食べないと力が出ないので。おかげでパワーが出ました」。女房役の谷田と父のアシストで、まずは初戦をクリア。次は中1日で18日に小樽水産戦を迎える。「先は見ない。目の前の一戦です」。無欲の投球で、夢の甲子園をたぐり寄せる。【永野高輔】