<高校野球静岡大会:静岡商3-2静清>◇25日◇準決勝◇愛鷹球場

 第3シードの静岡商は、延長14回無死三塁で、野極琢斗内野手(3年)が勝ち越し打を放った。静清を振り切り、6年ぶりの優勝に王手をかけた。

 5試合のうち3度目の延長戦も粘り強かった。2-2の延長14回表、静岡商・野極がついに均衡を破った。無死三塁で打席に入ると「初球から食らいつこうと思った」。言葉通りにスイングすると打球は中前へ抜けた。今大会3度目、前日に続く延長戦を制する勝ち越し打で5年ぶりの決勝進出を呼び込んだ。「打てて良かった」。普段は使わないオレンジ色のバットでの一撃に喜びは格別だった。

 バットは4番相原将輝外野手(3年)が使うものだった。相原は4回に左翼の守備でフェンスに激突。右手首を負傷し病院へ向かった。見城喜哉監督(52)が「骨折だと思う」という痛恨の離脱。伊豆市リトルシニアからチームメートで、静岡市内の下宿先も同部屋の野極は燃えた。延長に入ってから、この日は外野手に専念した中本聖エリヤ(3年)と共に使い始めた。同11回の場面では死球。2度目で迎えたチャンスをワンスイングで仕留める勝負強さには友への思いが込められていた。

 三塁打で野極の一打をお膳立てした水口潤哉外野手(2年)も同シニアで相原の後輩。7回に「当てただけでセンターフライになった」と静清・エース米田の球威を逆手に取り、9回から3打席連続安打。「相原さんにいい報告ができる」と喜んだ。

 ここまで5試合で59イニングを戦った。延長3試合いずれも先行で、失点を許されない状況を勝ち抜いてきた。見城監督は「みんなで打ってみんなで守る」と総力戦を強調した。「相原を甲子園に連れて行く」。新たな合言葉の下、6年ぶりの頂点へ挑む。【石原正二郎】