<高校野球岩手大会:盛岡大付5-3花巻東>◇26日◇決勝◇岩手県営球場

 高校生最速の160キロ右腕、花巻東・大谷翔平(3年)の夏が終わった。決勝の盛岡大付戦に先発。毎回の15三振は奪ったが、0-1の3回に県内の公式戦で初めて本塁打を浴びるなど、8回2/3を投げて9安打5失点(自責5)。3季連続の甲子園出場はならなかった。大リーグからも熱視線を浴びる大器は、国内プロ球団に進路を定めて「最終的にはメジャーに行きたい」という夢に向かっていく。

 「岩手から日本一」を目指した最後の夏は短かった。2点差に迫った9回。最後の打者が中飛に倒れると、三塁走者の大谷は、本塁ベース上で天を仰いだ。土壇場で自ら適時打を放ったが、3度目の甲子園にあと1歩届かなかった。「先に点を取られて。まだまだこの仲間とやりたかった」と声を詰まらせ、こらえていたものが目からこぼれた。

 毎回の15奪三振の熱投だったが、9安打5失点。0-1の3回1死一、二塁では、4番二橋に左越え3ランを浴びた。ファウルとも見える当たりで球審らにアピールしたが、判定は覆らず、岩手県内の公式戦で初の被弾。「自分のせい」と言い訳はしなかったが、投げる際の悪癖が出ていた。踏み込む左足がインステップし、腕が横振りになっていた。上から腕をしならせるように振って160キロを出した19日の準決勝とは別人のようだった。

 大阪桐蔭・藤浪晋太郎(3年)と投げ合ったセンバツ1回戦と似ていた。佐々木洋監督(36)は「緊張しない子だと思っていたが、今朝は口数も少なかった。下半身が使えず、肘も下がり気味だった」。この日の最速は2回にマークした156キロ。徐々に球威が落ち、6回には浮いた直球を狙われて2長打から5点目を失った。再登板した8回途中には130キロ台後半まで落ちた。抜け球による頭部死球や、打者の背中を通過するボールもあった。

 翌日の決意をつづる野球日誌で「ショックで何も書けなかった」(大谷)というセンバツ敗戦から、藤浪が載っている新聞を寮に貼り付けた。悔しさを糧に、フォーム修正に取り組んできたが、勝負どころで崩れた。

 高校生最速の160キロ右腕、通算56本塁打のスラッガーとしてメジャー球団も注目する。試合後は「監督や周りの人と話して決めたい」と明言は避けたが、国内のプロに進路を定める。将来は「最終的には行きたいなと思う」とメジャーへの思いもある。怪物は、さらなる成長を目指し、次の舞台へ向かう。【今井恵太】