<全国高校野球選手権:佐世保実5-3札幌一>◇11日◇1回戦

 佐世保実(長崎)が20年ぶりの甲子園白星をつかみ取った。札幌一(南北海道)を接戦で破り、92年以来の校歌に胸を張った。4番の松山和博内野手(3年)が5打数3安打1打点。3回には先制の適時二塁打を放つなど、夢舞台で大暴れした。

 少し薄暗くなった甲子園で、佐世保実ナインは校歌を思い切り歌った。点を入れては相手に追いつかれる苦しい展開。持ち前の粘りと全員野球で20年ぶりの勝利をあげた。「甲子園は雰囲気がすごく良かったです」。主将で4番の松山がチームを引っ張り20年ぶりの白星をあげた。

 大舞台で思う存分暴れ回った。3回に1死一、二塁で左中間へ二塁打で先制点をあげると、二塁で思わずガッツポーズ。さらに7回は中前打でチャンスを広げ、押し出しで5点目のホームを踏んだ。長崎大会は打率2割台だった4番が5打数3安打1打点と文句ない活躍ぶりを見せた。「県大会では打てなかったのでチャンスで打ちたかった。気持ちで打ちました」と松山も復調の手応えは十分。「うちは松山のチームなので、彼の活躍は大きいですね」と清水央彦監督(41)も4番の復活を喜んだ。

 テレビで見ている父に頑張っている姿を届けたかった。74年に佐世保工で甲子園出場を果たした父博之さん(56)は昨年6月、脳梗塞で倒れた。命は取り留めたが後遺症があり、現在も入院中。2日前、父と電話で話し「絶対打てるから、自信持ってやれ」と激励された。「自信を持って打席に立ちました。打ったところを見せられて良かった」。父の言葉に後押しされ、父が果たせなかった甲子園1勝を果たした。

 名前の「和博」は巨人などで活躍した清原和博氏(日刊スポーツ評論家)のファンだった父が名付けた。桑田との「KKコンビ」で甲子園の一時代を築いた偉大な選手と同じ名前を持つ松山が、聖地でもっともっと大暴れする。【前田泰子】

 ◆松山和博(まつやま・かずひろ)1994年(平6)8月28日、長崎県佐世保市出身。小1でソフトボールを始め、中里中で野球部。3年のときは1番遊撃手。高校では1年春からベンチ入りし、秋から二塁手でレギュラー。好きな選手はヤンキース・イチロー。167センチ、66キロ。右投げ左打ち。