<全国高校野球選手権:東海大甲府3-2宇部鴻城>◇19日◇3回戦

 宇部鴻城(山口)の夏が終わった。エース笹永弥則投手(3年)が、強豪・東海大甲府(山梨)打線を3点に抑えたものの、惜敗した。

 夏の終わりを告げるサイレンが鳴る。宇部鴻城のエース笹永は、ベンチ前で目を閉じて顔を上に向けた。敗れはしたが、3失点完投。最後の試合でエースの意地を見せることができた。

 甲子園では2試合で11失点だった。「今まで自分がチームの足を引っ張ってきたので、今日はチームを引っ張りたかった」。言葉通り、マウンドで仲間を引っ張った。低めに丁寧に、緩急を使った投球で、4回まで相手打線をわずか1安打に抑えた。

 だが、5回に味方が2点を先制した直後、2死一、二塁から三塁打を打たれて同点に追いつかれた。7回には失策で走者を出して勝ち越しを許した。「5回は2アウト取って早く勝負しすぎた。でも、ここまで抑えられると思わなかった。甲子園で一番いい投球ができました」。リードを守りきれなかったのは悔いが残るが、力は出し切れた。

 3年生はわずか8人しかいない。人数は少ないが、8人が団結して初めて夏の甲子園に出場し、7年ぶりに山口県勢としての勝利を挙げた。尾崎公彦監督(42)も「甲子園でここまで勝って、山口のレベルを見せられた。山口の球児にも勇気を与えられたと思う」とナインをたたえた。ベンチ入りメンバーの半分が下級生。甲子園を目指した宇部鴻城ナインの戦いは、もう始まっている。【前田泰子】