<全国高校野球選手権:作新学院4-0熊本工>◇15日◇2回戦

 作新学院(栃木)は、歌手長渕剛を愛する3番山下勇斗捕手(3年)の決勝2ランで、熊本工を破った。

 Ohスタンス、俺は変わっちゃいない-。大好きな歌手長渕剛の歌の一節そのままだった。1回1死二塁。作新学院・山下は昨夏と同じく左翼スタンドに豪快な2ランを突き刺した。「狙っていた」と132キロの直球を振り抜くと、打球はぐんぐん伸びて左中間のフェンスを越えた。2年連続となる1発に「去年は無我夢中でしたけど、今年はやってやろうと思っていた」と喜びを爆発させた。

 長渕の歌が山下に力を与えた。試合前には必ずバスの中で「情熱」という曲を聴いて気合を入れる。「ほら情熱、情熱、情熱。真っ赤に燃えたぎるあの時の情熱はどこだ!」というサビが奮い立たせてくれるという。この日も試合前には「バッチリ聴いてきました。打てる気がします」と戦闘モードに突入。最高潮に達した気持ちが、試合開始直後の特大弾を生んだ。

 きっかけは小針崇宏監督(30)の“ライブ”だった。昨年6月に合宿所でギターとハーモニカを手にして長渕の代表曲を1時間熱唱し続けた。乾杯、とんぼ、巡恋歌…。スピッツなどおとなしい曲が好きだった山下は「これだ!」と感激した。当時肩を故障し、捕手として試合に出場できずに落ち込んでいた気持ちが前向きになった。今も左膝の靱帯(じんたい)を損傷し、痛み止めを飲んでいる。それでも「泥まみれになってやります」とケガの影響を感じさせない。

 この日の1勝で小針監督に甲子園春夏通算10勝目をプレゼント。「もう1つ、2つと監督にウイニングボールをあげたい」と意気込む。監督との固い絆に思いを寄せる男が、優勝に向かって突き進む。【島根純】

 ◆作新学院の完封勝ち

 作新学院は渡辺、朝山の完封リレー。同校が甲子園で完封勝ちしたのは73年春に江川卓が今治西を3-0で完封して以来。夏の大会では、62年に加藤斌が決勝で久留米商を1-0で完封し、春夏連覇を達成して以来。