<全国高校野球選手権:花巻東5-4鳴門>◇19日◇準々決勝

 花巻東(岩手)が、鳴門(徳島)に逆転勝ちし、09年以来4年ぶりの準決勝進出を決めた。先発細川稔樹(2年)、2番手の中里優介、抑えの河野幹(ともに3年)がそれぞれ好投。相手に的を絞らせない「左3枚リレー」で、鳴門の好調「うずしお打線」を5安打4点に抑えた。日大山形も明徳義塾(高知)に4-3で勝ち、県勢初の4強入りを果たした。東北勢2校の4強進出は1989年(平元)以来、史上2度目。準決勝は明日21日に行われ、花巻東は第2試合で延岡学園(宮崎)と対戦する。

 花巻東の左腕トリオが3戦2ケタ安打の鳴門「うずしお打線」を止めた。9回裏、1点差に迫られ、なおも2死満塁。1本出ればサヨナラのピンチでも3番手河野は腕を思い切り振って攻めた。最後は116キロのスライダーで三飛。佐々木洋監督(38)は「あいつは動じない。抑えてやろうという気持ちがボールに伝わっていた」。「自分に足りないのは強気」と、入学時からメンタル面に関する本を読んで心を鍛え、今春にベンチ入りした河野が堂々と役割を果たした。

 彦根東、済美戦に続く3戦連続の継投策。先発は2年の細川だ。岩手大会決勝で強打の盛岡大付を5安打1失点に抑え完投し、彦根東戦では5回途中から登板し勝利に貢献した。サイドスロー気味の出所の見えづらいフォームで角度のあるボールを投げ込む打者泣かせの投手。打率4割4分の鳴門打線を打たせてとるのが狙いだった。

 初回からゴロの山を築き、4回まで無安打。6回には3番岸里亮佑(3年)の1発で2点のリードも奪った。だが、スライダー、スクリューと多彩な変化球と直球を交えテンポ良く投げ込んでいた細川がその裏、突然崩れた。「力みが出てしまった」と、1死から2連続四球と3安打で逆転を許す。それでも佐々木監督は代えなかった。

 7回に再び死球、四球と続いたところで2番手中里にスイッチ。中里は踏ん張り7、8回と無安打も、9回先頭から2四球。8回に3連打などで逆転していたこともあり「気持ちに余裕が出来すぎた」と制球が乱れ、河野にマウンドを託した。結局、1点差で一進一退の試合を制した佐々木監督は「もう少し早い段階で代えてあげられれば」と2回の継投のタイミングを悔やんだが、それでも「ピッチャーがよく頑張ってくれました」とたたえた。

 大エース菊池雄星を擁した09年以来の4強だ。「黄金世代」の功績はプレッシャーでもあった。細川は菊池に憧れ、中学のシニアチーム、花巻東と同じ道をたどってきた。中学時に譲り受けたグラブも寮の部屋に飾ってある。だが、昨秋県大会の初戦敗退以来、その世代と比べられることに悔しさを感じていた。「あの時(09年)の話は佐々木先生にさせない、とみんなで言ってきた」。もう1勝して、先輩を超えることが目標だ。

 河野は「本当は先発で投げたいけど、こういうチームなので継投でやるしかない」と話す。この日は延長も想定し、右の岸里も準備していた。全試合完投出来るような絶対的なエースはいなくても、4人の力を合わせ県勢初の夏の決勝を目指す。【高場泉穂】