<全国高校野球選手権:前橋育英3-2常総学院>◇19日◇準々決勝

 快進撃が止まらない。初出場の前橋育英(群馬)が県勢10年ぶりの4強入りを決めた。延長10回1死二、三塁から土谷恵介内野手(3年)が適時打を放ち、常総学院(茨城)にサヨナラ勝ち。2回の守備で2度失策し、9回の第4打席まで無安打といいところがなかった3番打者が意地を見せた。県勢は夏60勝目。休養日を1日はさみ、明日21日の準決勝で日大山形(山形)と対戦する。

 これまでの積み重ねが最後の最後で生きた。前橋育英の土谷は「何も考えていなかった。体が反応した」と振り返る。10回1死二、三塁。初球だった。外角高めのチェンジアップをコンパクトに振り抜いた。「カキーン!」と小気味の良い金属音のあとに、地鳴りのような歓声が起きた。中前に落ちるサヨナラ打に思わず両腕を突き上げた。

 2回の守備で併殺の好機に遊撃から一塁へ悪送球。先制点につながった。その後もミスをし、1回に2失策。責任を感じ、勝利が決まったあとは「本当は打った瞬間に打ち取られたと思ったんですけど…」と胸をなで下ろしていた。

 常総学院の先発飯田を攻略できなかった。8回まで6安打を放つも無得点。キレのいいスライダーとツーシームに凡打の山を築き、0-2の最終回には涙を流す選手がいたほど敗戦ムードが漂っていた。しかし9回に飯田の右太ももがつり負傷交代。アクシデントがチームに風を吹かせた。

 2番手の常総学院・金子を責め立てた。9回に高橋光が2点適時三塁打を放って同点に追いつくと、勢いは止まらなかった。3回戦までの3試合で計3安打しか放てなかった土谷は「(高橋)光成に頼ってばかりで申し訳なかった。絶対に決めてやろうと思っていた」と一振りにかけていた。

 ここ一番での集中力は日頃の練習で磨いた。練習の最後には全員で素振りをする。ストライクゾーンを9分割した数字に合わせ、スイング。1なら内角高め、6なら外角の真ん中、9なら外角低めといったようにコースを意識する。土谷は練習だけでなく夕食後の30分間、2メートル先も見えない暗がりの中で素振りを繰り返した。「エラーで気持ちが切れそうになったりしたが、集中して出来た」と練習の成果に笑顔を見せた。

 「全員でつかんだベスト4。僕は最後に打っただけ」。次は明日21日の準決勝の日大山形戦。全員野球で群馬県勢2度目の決勝進出をつかむ。【島根純】