<高校野球南北海道大会:浦河5-0苫小牧中央>◇28日◇室蘭地区Aブロック代表決定戦◇苫小牧市営緑ケ丘

 半世紀以上の時を超えて、60年ぶりの復活だ。室蘭地区で浦河が、春季全道大会に出場した苫小牧中央を下し、60年ぶり2度目(南北分離後は初)の南北海道大会出場を決めた。チームをけん引したのが菊地兄弟だ。兄で4番の菊地奨悟中堅手(3年)が2打点、弟のエース菊地悠也投手(2年)が2戦連続完封と躍動した。09年に札幌北が記録した55年ぶりを上回る、最長ブランクでの出場をたぐり寄せた。

 9回の守り。2死一、二塁。5点のリードをもらったエース菊地悠也の顔には、笑み。「1球1球、集中して投げました」という114球目。60年ぶりの南北海道大会出場を決める打球が、中堅を守る兄奨悟のグラブにすっぽりと収まると、マウンドの弟は右の拳を固く握った。

 「この1週間で成長した」と吉田健作監督(33)が認めるように、人口約1300人の町からやってきたナインは、試合を経るごとにたくましくなった。部員は20人。3年生は3人しかいない。9安打を浴びながら、2試合連続無失点に抑えたエース菊地悠と、1回に2点三塁打を放って打線を勢いづけた4番菊地奨の“菊地ブラザーズ”を投打の軸に、強豪ぞろいの地区を勝ち上がった。

 大事な人と、約束した。1回戦の前日、奨悟は母美奈子さん(41)へ「絶対に全道へ行くから、胸を張ってスタンドから見ていてね」とメールを送った。弟と一緒に甲子園を夢見ることが出来る、最後の夏。1回1死三塁、中堅の頭上を襲った打球を、必死で追ってジャンピングキャッチした兄は「プレッシャーは、ピッチャーの悠也の方があったはず。助けたいと思って、全力で追いました」。全3試合、計349球を1人で投げ抜いた弟を、攻守で支えた。

 チームとしても、負けられない理由があった。竹内脩(しゅう)三塁手(2年)の父が、2日前に逝去。告別式のため欠場した仲間のためにも、ここで終わるわけにはいかなかった。「3年生が3人しかいなくて大変だったけれど、自分たちの代で、歴史を変えるという気持ちでやって来ました」と奨悟。仲間との絆。そして、勢い。狙うのは、もちろん甲子園だ。南大会でも、台風の目になってみせる。【中島宙恵】

 ◆浦河

 1932年(昭7)浦河実践女学校として創立の道立校で、昨年創立80周年を迎えた。生徒数422人(うち女子221人)。48年に男女共学となり浦河に改称。野球部は共学化とともに創部。部員数20人。OBに「利休にたずねよ」などの映画監督、田中光敏氏や「風の谷のナウシカ」などを手掛けたアニメーション作家、飯田馬之介氏。所在地は北海道浦河町東町かしわ1の5の1。小島晶夫校長。

 ◆南北北海道大会ブランク代表

 南北海道でこれまでの最長は09年に出場した札幌北の55年ぶり。08年に江別が47年ぶり、01年に函館商が31年ぶり、91年に札幌南が40年ぶりに出場した。北北海道では、06年に32年ぶり釧路商、33年ぶり弟子屈の釧根勢が初戦で対戦(釧路商が6-1勝利)。04年には十勝地区の江陵が30年ぶり、02年の池田は33年ぶりの出場だった。