<高校野球福島大会:安積黎明5-4福島成蹊>◇10日◇1回戦◇開成山球場

 安積黎明が延長13回の激戦を制して、開幕試合を飾った。4-4の延長13回2死二、三塁で9番佐久間智也捕手(2年)が左前に決勝タイムリーを放ち、福島成蹊を下した。

 13回1死満塁から初球をウエストされ、スクイズを空振りした直後だった。2死二、三塁となって安積黎明の9番佐久間は気持ちを切り替えた。「スクイズを失敗して、すぐ『絶対打たなきゃ』と集中できた」。2球目の真ん中高めの直球を左前に運ぶ。延長までもつれ込んだ開幕戦を、2年生捕手がケリをつけた。チーム2年連続の初戦突破も呼び込んだ。

 延長に入って10、12、13回、先頭打者を出塁させた右腕エース渡辺晃太(3年)を巧みにリードした。「ストレートが走っていたので、高めを要求した」と、バントのしづらい高めに130キロ台の速球を投げさせて、3イニングとも次打者に犠打をさせなかった。試合終了の瞬間、佐久間と抱き合った渡辺晃は「うれしかったです」とほほ笑む。自己最速を2キロ更新する138キロを計測し、14奪三振161球で完投した。

 佐藤文彦監督(29)は「粘り強く」を選手に求める。練習のキャッチボールは、捕球後すぐに送球の体勢に入る。常に実戦を想定し、反復練習も行う。佐久間は「春の大会や練習試合は接戦が多かった」と言い、9回に1点差を追いつかれても選手全員が冷静だった。佐藤監督も「後半、粘り強く守れたことなど、すごく選手の成長を感じた」と目を細めた。

 01年に初めて夏の大会に参加後、「3回戦の壁」に5度泣かされている。佐藤監督は「目標ではないが、3回戦突破の意識はある」。佐久間も「今大会はまず3回戦突破」と力を込めた。開幕ゲームで粘りを発揮。延長13回の激戦を制して、安積黎明が「壁破り」に弾みつけた。【久野朗】