<高校野球新潟大会:三条10-1十日町総合>◇15日◇2回戦◇柏崎市佐藤池野球場

 第96回全国高校野球選手権(8月9日開幕・甲子園)新潟大会第6日は、2回戦3試合が行われた。昨秋4強の三条は7回コールドで、十日町総合を破った。勝雅史監督(50)は京大理学部OBで、徹底的に「数字」や「理屈」にこだわる指導法が特色。この日は試合時間1時間26分で、満点に近い結果を出した。2回戦はすべて終了。2日間の休養日を挟み、18日から3回戦がスタートする。

 塁間を何度も駆け抜けた。勝監督は初回から仕掛けた。先制された後の1死一、三塁で二盗を仕掛けたのを皮切りに、6盗塁で足で揺さぶった。「今日は勢いをつける意味でもどんどん仕掛けた。相手にボディーブローのように効いてくる」と大勝を振り返った。

 勝監督の左手には、ストップウオッチ搭載の腕時計が巻かれていた。ベンチ内で、相手投手の投球から捕手の送球が二塁に到達する時間を計っていた。十日町総合バッテリーが要した時間は4秒3。成功の確率は高かった。「時間を計ることで、盗塁の成功率が上がる。今日は仕掛ける基準となる数字を上回っていっていた」と明かした。

 勝監督は指導者を志しながら、県有数の進学校の三条から京大理学部数学科に現役で合格。卒業後、六日町に赴任し、勝つためにあらゆる野球本を読んで出会った1冊があった。尼崎北(兵庫)を79年から2年連続でセンバツ出場に導いた西山昌扶監督が記した「甲子園へ

 僕の野球秘術」だ。

 同書の中で「プレー時間を計る」というくだりに、理系頭脳が反応した。それ以来、一塁に駆け抜ける時間、二塁から本塁までにかかる時間、あらゆる時間を計り始めた。例えば、外野から本塁への返球では、打球が飛んでから6秒8以内のバックホームを求める。二塁走者がワンヒットで本塁に生還する際の時間は、高校生では平均6秒8かかるということに基づく。練習では必ず、女子マネジャーにプレー時間を計らせている。

 またエース小杉悠太投手(3年)に冬の間、「運動量保存の法則」に基づき「重たいものが止まりづらいように、お尻を大きくすることで球速が速くなる」と指導。一冬越えた小杉は直球の切れが増し、この日は7回3安打自責0の投球を見せた。勝監督が母校に就任して6年目の夏。「何が何でもぜひ行きたい」。ロジカル野球で、甲子園を狙う。【高橋洋平】

 ◆勝雅史(かつ・まさし)1963年(昭38)11月7日、新潟県三条市生まれ。三条では2年時に三塁手で夏8強。京大理学部数学科に進学し、大学では軟式野球同好会でプレー。卒業後は六日町に赴任し、95年夏の甲子園に出場。巻では04年夏に新潟大会決勝に進出し、09年に母校の三条の監督に就任した。数学科教諭。