<高校野球岩手大会:盛岡大付5-4花巻東>◇24日◇決勝◇岩手県営

 盛岡大付が花巻東を下し、2年ぶり8度目の甲子園出場を決めた。5戦連投の先発松本裕樹(3年)が9安打4失点と苦しむ中、2-4の5回裏に2死二塁から2番立波右恭、3番菜花大樹(ともに3年)が連続安打で1点差とし、4番松本が2点タイムリーを打ち逆転。昨夏以来、3季連続県王者の花巻東にリベンジを果たした。

 勝利の雄たけびの後、ナインも関口清治監督(37)も、号泣していた。昨夏決勝、今春の県大会決勝で敗れた相手に、三度目の正直で逆転勝ち。「苦しかった」。普段はクールなエース松本の言葉と涙が、すべてを物語る。昨秋以来、1度も優勝を味わったことのないチームが、最高の瞬間をかみしめた。

 1回裏に4番松本の右翼への痛烈な2ランで先制も、4回表に3点を奪われ2-4と逆転を許した。その裏、花巻東は左腕細川稔樹(3年)を投入する。甲子園4強メンバーで、どんな時も動じないエースが抑える、花巻東の勝利の方程式だった。

 だが、そこを狙っていた。5回裏2死二塁、まず2番立波が左前にヒットを打ち2死一、三塁。続く菜花が中前へタイムリーを打ち、1点差とした。1本出れば逆転の場面。4番松本は中堅手が右翼へ寄ったシフトを見透かすように、2球目を左中間へと運ぶタイムリー。左手を伸ばして、大きな角度を付け投げてくる細川対策として、打撃投手をプレートから左に移動させ打ち込む練習を徹底していた。逆転のホームを踏んだ菜花は「松本があそこで打ってくれると思っていた。あまりガッツポーズはしないんですが、うれしすぎて…」と拳を突き上げた。

 逆転の準備も出来ていた。大会1週間前から、スコアボードに相手チームに「6」の得点を入れ、6点ビハインドから9回に攻撃する練習を重ねてきた。準々決勝の盛岡四戦では2点を追う7回裏に松本の3ランで逆転勝ち。関口監督は「今日はまだまだイニングがある、と。毎回、いけるとしか言ってなかった」と選手を信じていた。

 投打ともにエース松本が中心だが、50メートル5秒7の俊足で果敢に塁を狙う1番高橋涼(3年)、通算57本塁打を誇る3番菜花、2年生ながら長打力のある5番遠藤真、桜糀大輝、土井堅斗、大橋和弥の3年生左腕3人衆と役者はそろう。今大会では6戦無失策と守備も光った。ピンチのたび、マウンドで仲間に声をかけられた松本は「周りがいて、自分がある」とあらためて感謝。8度目の甲子園出場も、夏は1度も勝ったことがない。激戦を制した自信を胸にチーム一丸で、まず夏1勝を狙いに行く。【高場泉穂】