<全国高校野球選手権:大阪桐蔭10-0八頭>◇21日◇3回戦

 藤浪先輩、見ていただけましたか。大阪桐蔭が八頭(鳥取)を投打に圧倒し、2年ぶりに8強に進んだ。12年甲子園春夏連覇時のエース藤浪晋太郎(阪神)が見守る前で、2年生左腕の田中誠也が同校では藤浪が投げた12年夏決勝以来の完封勝利。打線も香月一也内野手(3年)が4安打を放つなど16安打10得点で田中を援護し、近畿勢の砦(とりで)を守った。8強が出そろい、今日22日に準々決勝4試合が行われる。

 藤浪もなれなかった2年生の大阪胴上げ投手が、甲子園で藤浪に続いた。田中が公式戦初の9回完封を無四球で飾った。「腕をしっかり振って低めを突いていけた。四球もなかったし、完封できたので(野球人生で)一番のピッチングです」。大阪桐蔭では、藤浪が光星学院(現八戸学院光星=青森)を2安打完封し、史上7校目の春夏連覇を果たした12年夏決勝以来となる快挙を、身長170センチの左腕がやってのけた。

 3回から7回まで完全投球。この日の最速134キロの直球にチェンジアップ、カーブ、スライダーを思うコースに投げ分けた。「初回から腕が振れました。緩い球を投げるのは勇気がいりますが、自信はあります。コントロールと球の出し入れを大事にしているので」。尊敬するヤクルト石川のように制球を徹底した。

 甲子園デビューは不本意だった。1回戦・開星(島根)戦は緊張で腕を振れず、5回5失点で降板。西谷浩一監督(44)からは「反省は大事。しかし引きずるな」と切り替えを促された。短期決戦の甲子園で、同じ失敗を繰り返すわけにはいかない。苦しいときは、中村主将に書いてもらった帽子のつばの「弱気は最大の敵」の文字を眺め、8強へゼロを並べていった。

 170センチ、60キロでユニホームのサイズはチーム最少でも、運動神経はチームで群を抜く。他の球技も難なくこなし、中でも卓球の腕前はインターハイの常連の卓球部員も一目置くほど。父章博さん(48)に「小さくてもできることがある。小さいなりにもできることをやれ」と育てられ、負けん気の強さも養った。

 オフの自主トレ公開などで会った2年前のエースを「すごい存在感のある方です」と評したが、藤浪に共通する相手を封じる力があった。2年ぶり全国制覇への道を、田中が切り開いた。【堀まどか】

 ◆田中誠也(たなか・せいや)1997年(平9)10月27日、大阪・大東市生まれ。深野北小3年から四条北ヤンキースで野球を始めた。深野中では生駒ボーイズに所属し投手。1年秋から背番号15でベンチ入り。50メートル走6秒8。遠投100メートル。170センチ、60キロ。左投げ左打ち。