<高校野球秋田大会:大曲1-0秋田中央>◇14日◇2回戦

 創立100周年を迎えた大曲が、番狂わせを演じた。第4シードの秋田中央を1-0で下し、2年連続の3回戦進出を決めた。先発した背番11の左腕、佐藤滉大投手(3年)が、強打の相手打線を散発3安打に抑え公式戦初完封勝利。得意の縦に大きく割れるカーブを武器に、三塁を踏ませぬ快投を見せた。

 直球は130キロに満たなくてもキレがある。変化球でも、真っすぐと同じように鋭く腕を振る。端正なフォームで投じる佐藤滉がシード食いを演出した。135球での完封劇に、最後は何度も両拳を握った。「やっと勝った。試合中は長かった」。1点を守る重圧から解放され、笑った。

 「一番自信がある」という、大きく鋭く曲がる縦のカーブを有効に交えた。一転して内角を突く強気な投球も、相手打線に的を絞らせなかった。「攻めていった」と、6四死球のうち3死球も気にしなかった。フィールディングも抜群だ。足を絡めた攻撃を得意とする相手に、盗塁を許さなかった。秋田中央の桑原康成監督(32)も「けん制がうまい。あの子からは走れない。(サインを出せば)ギャンブルになる」と舌を巻くほどだった。

 連投も平気だった。前日13日の由利戦は125球で2失点完投。「連投で調子は良くなかったけど、気持ちで投げた」と佐藤滉。冬場、雪の積もる中でも、自宅から学校まで約6キロの道を走って通った自信もあった。それと同時にフォームも完成させた。昨秋ビデオでチェックし「カーブと直球が違うのはいけない。いろいろチャレンジした」と修正。横浜工藤をイメージすることもあったという。

 驚くことに、小中高と1度もエースナンバーをつけたことがない。最後の夏も背番11。だが先発させた太田弘史監督(40)は「一番いい投手を出すと決めていた」と、エースと認める。佐藤滉には、その自覚と自信も出た。同校節目の年に「優勝を狙っていく」。過去最高成績は62、82年の4強。背番1でなくとも、佐藤滉は1番上を目指す。【清水智彦】