<高校野球秋田大会:大館鳳鳴6-3新屋>◇20日◇準決勝

 学校創立110周年を迎えた大館鳳鳴が「初王手」をかけた。6-3で新屋を下し、1県1代表校制でなかった46年以来、62年ぶりの決勝進出を果たした。3-2と1点リードの8回、相手ミスと連続スクイズで3点を奪って突き放し、投げてはエース山本隆介投手(3年)が152球で完投した。

 大歓声と悲鳴が交錯する中、遊撃手が二塁ベースを踏んだ。勝利の瞬間を見届けた山本は、右拳を握りしめた。スタンドへのあいさつを終えると、応援生徒から時ならぬバースデーソングの大合唱。チームメートは手拍子で取り囲んでくれた。「恥ずかしかった」と山本。そう言いながら、大きく両手を挙げ応えた。18歳になった記念すべき日に、同校62年ぶりの決勝進出を決めてみせた。

 昨年の準決勝。山本は苦い思いをした。秋田戦で、6-3の8回無死一、二塁から2番手で登板。1死満塁後に、3連続押し出し四球を与え1/3で降板した。チームも延長10回、7-8で敗戦。右指のマメをつぶした影響もあったが制球は決して良い方ではない。だが斉藤広樹監督(32)は「荒れ球は彼の持ち味」と、あくまでも長所ととらえ“放任”していた。この日も4四球を与えたが「去年以上にピンチで抑えてやろうと思っている」と130キロ中盤の直球とスライダーで10奪三振。152球完投で呪縛(じゅばく)を解いた。

 節目の年に、甲子園に大きく近づいた。ベースボールを初めて「野球」と翻訳した中馬庚(ちゅうまん・かなえ)が第7代校長を務めたこともあるほどの伝統校だ。旧制大館中時代の62年前は、角館中に6-7で敗れた。03年にはセンバツ21世紀枠の東北地区推薦校になったが、選出からもれた。同校野球部OB会長の桜田博さん(64)は「110年で、やっとここまで来た。このまま甲子園に」と期待する。「優勝目指して頑張りたい」と山本。甲子園出場校のない大館市の悲願もかける。【清水智彦】