<高校野球広島大会:広陵12-10総合技術>◇23日◇決勝

 7点差をはね返した広陵が12-10で総合技術を下した。広陵は2年連続19度目の甲子園。昨年は延長11回の末の勝利…。そして今年は同じ顔合わせで、それ以上の死闘だった。「甲子園に宝物を取りに行く」と中井哲之監督(46)。微妙な判定に泣いた昨夏のリベンジは優勝でしか果たせない。

 マウンドに歓喜の輪が広がる。気合のフォークで力善を空振り三振に仕留めた前田貴史(3年)の下に、一塁から先発の中田廉(3年)が、われ先にと抱きついた。今大会を支えた両右腕に2年生捕手の石畑佳佑が、二塁からは勝負強さを発揮した主将の林竜希(3年)が…。前田を中心に次第に大きくなる広陵の輪を、ベンチの中井監督が笑顔で見守る。2年連続19度目の甲子園切符を手にしたナインに、スタンドから惜しみない拍手が送られた。

 死闘だった。初回から1番が出塁し、2番が犠打で走者を進め、クリーンアップが返す。必勝パターンであっさり2点先制したが、リベンジに燃える総合技術の打線が火を噴いた。3回に3点、4回には中田を降板へと追いやる打者一巡の猛攻で一挙6点を加えた。

 4回を終えて2-9。それでも広陵ベンチにはあきらめムードはなかった。直後の5回だ。重圧と甲子園がちらつき始めた総合技術の乱れを見逃さない。四死球に失策、5安打を集中し、お返しの打者一巡で7点を奪い、すぐさま同点に追いついた。「相手とはやってきたことが違う。焦りはなかった」と林。決勝までの6試合で5失策と堅守を誇った総合技術が、この日だけで5失策。一瞬の勝負を制した広陵が12-10で優勝を飾った。

 甲子園への執念が奇跡の大逆転勝利を呼んだ。昨夏の甲子園決勝では4-0の8回裏1死満塁から野村祐輔投手(当時3年)の一球がボールと判定され、さらに押し出し、満塁弾で準優勝に終わった。「完ぺきにストライク。あれはないだろう。何球も」と抗議した中井監督の後ろ姿は、今でもナインの目に焼き付いている。

 「発言後、もちろん辞める覚悟はあった」(中井監督)。そしてあの甲子園に。表彰式を見守る中井監督は、自分より先に横にいた友森祐汰記録員(3年)の首にメダルを掛けた。「監督はいつも自分たちのことを考えてくれる。あの一件できずなが増した」(友森)。広陵が悲願の夏優勝へ-。今年こそ監督を男にする。【佐藤貴洋】