<高校野球東東京大会>◇27日◇準決勝

 東東京の都立勢唯一の生き残り雪谷が03年以来6年ぶり2度目の甲子園に王手をかけた。左腕エースの坂本貴幸(3年)が10安打を浴びながら完投、成立学園を7-1で下した。帝京も投打に二松学舎大付を圧倒して決勝に進出した。両校は29日に激突する。

 真夏の神宮に、再び「赤い旋風」が吹き荒れた。ユニホームの胸文字からアンダーシャツ、ストッキングと赤ずくめの雪谷が、6年前と同じスタイルで決勝進出を決めた。赤い旋風の主役は、エースで4番の坂本だ。身長175センチ、体重68キロのきゃしゃな左腕は、5試合連続先発のマウンドで何度もピンチを迎えた。3者凡退は2回の1度だけ。満塁ピンチが2度。10安打5四死球を許した。それでいて失点は1だけだった。

 女房役の合田隼人捕手(3年)が当然のように話した。「彼はランナーを出しても動じないんです」。9回も2死一、二塁となったが、最後の打者を12個目の三振に仕留め、ガッツポーズを繰り返した。この日の完投で、計47イニングを1人で投げ抜いたことになる。坂本は「疲れはあったけど、後半になるほど調子が上がった。スライダーが低めに決まってくれた」と心地よさげに汗をぬぐった。

 体はきゃしゃだが、心は強い。相原健志監督(42)は「春の都大会で負けてから目の色が変わった」と指摘した。国士舘戦でプロ注目の原島巧捕手(3年)に本塁打されるなど8失点。ここから練習態度が変わった。校舎の周囲を回る走り込みでは「もう、駄目」と限界を感じたとき「さらに5周」のノルマを課した。心身をいじめ抜いて迎えた最後の夏は、国士舘に雪辱したばかりか、夢の甲子園に王手をかけた。坂本は「もちろん、自分が行く。全力で帝京に立ち向かう」と意気込んだ。

 相原監督にも帝京は願ってもない相手だ。95年夏の都大会準決勝で帝京にコールド負けした。その年に帝京は全国制覇。忘れられない苦い思い出だ。「あれ以来、創意工夫して甲子園初出場(03年)をつかんだ。今度は帝京に対等の勝負を挑んで、2度目をつかみたい」と力を込めた。【佐々木紘一】