<高校野球西東京大会>◇16日◇3回戦

 親子2代の甲子園に5-1の快勝スタートを切った。巨人、米大リーグ・パイレーツで活躍した桑田真澄氏(42)の長男、桜美林の桑田真樹(まさき)外野手(3年)が東海大菅生戦に「8番中堅」で出場。3打数無安打だったが、勝利を決定づける貴重な1四球を選んだ。昨秋の都大会準優勝の難敵を突破し、父が活躍した夢舞台に1歩近づいた。

 ファウルが4球続いた。左打席に立つ桑田がカウント2-0に追い込まれてから懸命に食らい付く。暴れん坊将軍のテーマとスタンドの「クワター」コールがヒートアップした。1点リードの4回裏1死一、二塁で迎えた第2打席、自身に投じられた10球目のスライダーが外角高めに外れて四球。「ヨシッ」と気合の表情を見せた。偉大な父仕込みの選球眼で出塁すると、チームはこの回3得点を奪い、完全に主導権を握った。「変化球で攻めてきたのが分かった。全力で悔いのないプレーができました」と、晴れやかな表情を見せた。3打数無安打だったが、2回の守備では左中間への深い打球を好捕し、ゴールデングラブ賞を8度獲得した父譲りの守備センスも披露した。

 昨夏はケガでベンチ入りを逃した。2年ぶり、そして高校最後の夏だ。14日から泊まり込みの合宿で調整しているが、合宿開始前夜、父と「儀式」を行った。自らお願いして「いつものようにバリカンで頭を刈ってもらいました」。甲子園への強い思いを持ち、父のPL学園時代のビデオを見て育った。バリカンを手にした父に「楽しくやりなさい」とだけ言われた。父はバックネット裏で、スタンドでは母真紀さんが見守る中ではつらつとプレーした。

 父がうらやむ180センチ、80キロの立派な体格を誇るが大会直前はスタメンを外れることも多かったが、この日は奪い返し、片桐幸宏監督(51)の起用に応えた。「先発は前日に言われました。仲間、試合で使ってくれる監督、コーチ、みんなに感謝です」。父の希望は大学進学。でも、今は甲子園しか頭にない。春季都大会を制した日大鶴ケ丘、センバツ準優勝の日大三を倒さなければ決勝に進めない激戦ブロック。昨秋の都大会準優勝校という難敵を下し、聖地への視界は確実に広がった。球場の外で「良かったぞ、真樹」と応援の生徒たちに声を掛けられ、くりくり頭がさわやかな笑顔を見せた。【木南友輔】