<高校野球青森大会>◇20日◇準々決勝

 青森工が十和田工を2-1で下し、36年ぶりの4強入り。69年前、目前で消えた甲子園の夢に一歩近づいた。

 青森工が見事な集中力を見せた。5回に先制を許すが動じない。6回裏1死二、三塁で代打最上大河(3年)が左前打を放ち逆転。エース大澗(おおま)研太(3年)が5安打1失点に抑え、バックは無失策でもり立てた。勝利の瞬間、約750人の全校応援のスタンドから大歓声が起こった。

 1935年(昭10)創部の古豪で、41年夏は県大会で優勝した。だが日中事変の戦局悪化で甲子園大会も奥羽予選も中止。手が届きそうだったひのき舞台は幻に終わった。その後も上位進出を重ねたが、最近は春秋の地区予選で敗退、県大会にも出られない不振が続いていた。4強入りは74年以来36年ぶり。

 就任3年目で、ノーマークの古豪を台風の目に導いたのが滝渕安弘監督(42)。弘前工の二塁手で84年の秋季東北大会で優勝。決勝で元横浜、マリナーズの佐々木主浩(42)、元阪神の葛西稔(43)を擁する東北(宮城)を破った。神宮大会でもベスト4、翌春のセンバツに出場した(1回戦で報徳学園に6-7で惜敗)。

 「大澗がよく頑張り、1点先制されてもみんなよく辛抱した」と滝渕監督はナインをたたえた。合気道を取り入れ、ナインに丹田(たんでん=ヘソの少し下の部位で、気力が集まるところとされている)への意識集中する。この日は試合前と6回に入る前に実行。効果を発揮した。柴田大輔捕手(2年)は「甲子園にも出ていて、野球を知っている。信頼できる監督さん」と言う。

 春から夏へ、夏も1戦ごとに急成長。次は第1シード八戸工大一が相手だが、大澗は「今日のように力まず、先のことは考えず、1球1球集中して投げる」と話した。69年を経て、幻を現実にする時が来た。【北村宏平】