<高校野球山形大会>◇27日◇準決勝

 山形中央が先発全員16安打の逆転勝ちで山形南を8-1(8回コールド)で下し、今春のセンバツに続く甲子園春夏連続出場に王手をかけた。同校の決勝進出は17年ぶり2度目。初戦(東根工戦)で1回途中降板の武田直樹(3年)が4安打1失点完投し、決勝に向けて左腕エース横山雄哉(2年)の温存した。

 昨夏まで「1」を背負っていた背番号「11」の山形中央・武田直が、最後の夏にかける意気込みを示した。初戦の東根工戦は5安打3失点で初回途中降板。今夏、防御率16・88。「もう登板チャンスはないと思っていた」という試合で、5回以降、右手と両ふくらはぎにけいれんを起こしながら、3年生の意地を見せた。

 1回、いきなり先頭打者に右前打を許し、2死三塁から暴投で失点。初戦と似た流れに動揺したが「同じミスは繰り返したくない」と気持ちを切り替えた。2回以降は無失点に抑え、味方の反撃につなげた。エース横山は、一度もキャッチボールも行わずに完全休養。「先輩がコンディションを考えてくれました。(決勝の)明日は自分が1人で勝たせるピッチングをしたい」と感謝した。

 庄司秀幸監督(34)の選手に対する強い信頼と配慮もあった。今春センバツ出場の秋田商と盛岡大付の東北勢2校が県決勝で敗れた。センバツ出場校最後のとりでとなり、同監督は「決勝は万全の体制で臨みたい」とエース温存を決意。武田直には前日の精神的負担を軽減させるために、この日早朝に先発を告げた。

 4点リードの8回裏1死満塁では、女房役の3番・羽柴充輝捕手(3年)が走者一掃の左翼越え三塁打でコールド勝ちを決め、けいれんに苦しむ武田直を救った。21世紀枠出場のセンバツから、自力での甲子園出場が見えてきた。庄司監督は「(21世紀枠出場の)選考が間違っていなかったことを証明したい」と夏初制覇のかかる大一番を見据えた。【佐々木雄高】