メジャーで、ともにひとつの時代を築き上げたデレク・ジーターとアレックス・ロドリゲスが今、引退後の第2の人生で意外な明暗を分けている。

 ジーターとA・ロッドといえば、どちらも90年代中盤にデビューし、期待の若き遊撃手として脚光を浴びる存在だった。96年にヤンキースのジーターは新人王に輝き、マリナーズのA・ロッドはレギュラー1年目でプレーヤー・オブ・ザ・イヤーに選出される活躍。その後、選手として成長を続け、それぞれの存在感をさらに増していった。

 しかしA・ロッドは、01年にレンジャーズと当時の球界最高額の契約を結んだあたりから傲慢(ごうまん)な言動が目立つようになり、雑誌の取材でジーターを侮辱するような発言をして2人の関係を崩壊させた。さらにドーピングのスキャンダルもあり、現役時代の後半はどこにいってもブーイングを浴び、すっかりヒールイメージの選手となった。一方のジーターは、スキャンダルと無縁のクリーンな優等生として現役人生を過ごし、ヤンキースのキャプテンとしてリーダーシップのある人格者というイメージ。A・ロッドと違い、殿堂入りも資格取得1年目で選出されることが確実視されている。現役時代の評判を比べると、A・ロッドはジーターに大きく水をあけられていた。

 ところが今、2人に対する評価は180度逆転している。A・ロッドはFOXの野球解説者として、そのユーモアを交えた分かりやすい解説や周囲への気配りが評判となり、評価が急上昇。今オフにはESPNが引き抜きを試みる騒動もあるなど、野球解説者としては今、NO・1の人気を誇っている。2月にはボストンのマサチューセッツ工科大学で開催されるスポーツ分析学会にオバマ前大統領ら超ビッグなゲストとともにスピーチを行うことも決まり、米スポーツ界全体の顔にもなりつつある。

 一方のジーターは、昨年9月にマーリンズの共同オーナーとなり、現役時代から目標としてきた球団経営を実現したまでは良かったが、就任するや編成の全権を握り、中心選手を次々と放出してチーム解体を進めたため批判が殺到。マイアミの地元ファンの間ではジーター退任要求の署名活動が起こり、野球メディアから「やっていることが意味不明」「ジーターが野球人生で初めて失敗した」などとたたかれている。チームを素早く再建し戦力強化ができれば評価はまた一変するかもしれないが、名誉挽回までの道のりは険しいだろう。まだ引退後の人生は始まったばかりとはいえ、2人への評価がこれほど変わるとは、誰が想像しただろうか。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)