先日、監督が交代し若手選手が増えたヤンキースを今季初めて取材に行ったが、雰囲気がやはり少し違う印象を受けた。

 クラブハウスに行くと、ちょうどサッカーW杯(ワールドカップ)の期間中ということもあり、半数以上の選手のロッカーにW杯参加各国のオフィシャルタオルマフラーがかかっていた。チーム最年長の先発左腕CC・サバシアはドイツ、守護神アロルディス・チャプマンはフランス、セットアッパーのデービット・ロバートソンはウルグアイ、3年目のグレッグ・バード一塁手はブラジル。強豪国だけでなく、ベテランリードオフマンのブレット・ガードナーはロシア、救援投手のチェーセン・シュリーブはセルビア、トミー・カンリーはベルギー、昨季新人王で2年目のアーロン・ジャッジはエジプトのタオルマフラーをロッカーにかけている。

 それぞれが応援しているチームということなのか?

 シュリーブに聞いてみると「そういうわけでもないんだけど、いつの間にか自分はこれをピックすることになっていたんだ」と笑っていた。それでもピックしたチームが勝ち進むかどうかチーム内で競っているというわけで、試合前のクラブハウスにはテレビでW杯の試合中継が流れており、ひいきチームが勝つと盛り上がっている選手もいた。田中将大投手ももちろん、日本のタオルマフラーをロッカーに掛け、熱心に応援しているようだった。

 それにしてもヤンキースの選手たちがみんなでまとまり、このような「遊び心」を見せるというのは、これまであまりなかったのではないだろうか。今季の好調な戦いの裏には、チーム内のそんなリラックスしたムードがある。

 取材する立場の者にとって、ブーン監督になってから変わった点で助かるのは、試合前の会見時間が変わったことだ。ジラルディ監督時代は、夜7時からのナイターの日なら監督会見は午後3時50分からということが多かったが、今は午後4時15分から。これがなぜ助かるかというと、ホームのクラブハウスがメディアに開放されるのが通常、午後3時20分から1時間なので、誰か選手を取材したくても3時50分から監督会見に行かなければならないとなると、ほとんど時間がない。4時15分からの会見ならクラブハウスでの取材時間がほぼ丸々使えるので、ブーン監督はそうしたメディアの事情を考慮したのだろうか。会見のときの話を聞いていても、よく気配りのできる監督という感じがする。この監督の下、いい雰囲気のクラブハウスで選手たちは伸び伸び戦っているのではないだろうか。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)