取材を進めていく中で、日本製紙石巻野球部を熱心に応援する2人のすし職人に出会った。

 石巻工場のすぐ裏にある「かなめ寿司」はドラフト会議の夜、野球部が必ず訪れる店。大将の石森学さん(68)は「うれしいから」と、ありったけの上ネタを握って出すという。「ドラフトの日は、ただ名前を書くんだけど、1カ月ぐらいたつと、今度はサインを持ってくるんだ」。10年ヤクルト5位の久古から14年楽天7位の伊東まで、5人全員の各2種類の色紙をうれしそうに見せてくれた。

 そこから800メートル離れた場所にある「かめ喜寿司」は学さんの弟守さん(62)の店で、監督、スタッフ、選手がプライベートで訪れる。大の野球好き(阪神ファン)の守さんは、店の名前を刺しゅうした某スポーツメーカーの紺の長袖ジャージーを着て、すしを握る。仕事があるため2度の都市対抗はいずれも行けなかったが、会場にいる友人に電話し「実況中継」で楽しんだ。「石巻はもともと野球がうんとさかんなのよ。野球は娯楽。都市対抗に行ってほしいし、優勝も見たい」と地元の野球人代表として、夢を語ってくれた。

 どちらの店にも飾ってある都市対抗出場記念ボールは、これからどんどん増えていくだろう。【高場泉穂】

※「野球の国から 2015」<シリーズ9>「3・11が教えてくれた野球の力」取材メモ