昨年10月、ロサンゼルスにある中華レストランで前アスレチックス中島裕之内野手(32=現オリックス)と会った。2Aのプレーオフで骨折した左腕のギプスが外れ、ようやくトレーニングらしいトレーニングができるようになっていた。アメリカで過ごした2シーズンについて、オフの去就についてなど、積もる話をしていたら、あっという間に4時間近くが過ぎていた。

 「こっちに来る前に予習が足りなかったね」

 この一言が頭から離れない。メジャーは想像以上の契約社会である。各チームが持つ理念やGMの選手起用の傾向が自分に有利に働くか否か。代理人が必要な時に即座に動いてくれるか。こういった予備知識は日本では得がたいものかもしれないが、正直なところ、野球人としての実力と同じくらい、選手の運命を左右する要因になる。中島には、それが欠けていた。

 適材適所とはよく言ったもので、いい素材も間違った場所にあれば意味がない。数あるオファーの中から選んだアスレチックスは、残念ながら中島には適所ではなかった。“マネーボール”の申し子、ビリー・ビーンGMは選手を見限るのが早い。もう少し辛抱強いGMが率いるチームを選んでいたら、今年もメジャーでプレーしていたかもしれない。

 この反省を踏まえてか、日本の球団について、いろいろな角度から分析研究を重ねていた。その結果、適所として選んだのがオリックスだった。どんな風にチームになじみ、持てる力を発揮するのか。活躍を楽しみにしたい。【佐藤直子通信員】

※「野球の国から 2015」<シリーズ11>「THE NEWCOMER メジャー帰り編」取材メモ