4冠王も夢ではない。ヤクルト山田哲人内野手(23)が21日の最終打席から四球をはさみ、4打数連続本塁打の日本タイ記録を打ち立てた。3割、30発、30盗塁のトリプル3のうち本塁打をクリアしただけではない。打率は4安打で3割3分4厘に跳ね上げ、トップの川端に1厘差。打点も3ホーマーと適時打で7点を加え、畠山に5打点差と詰め寄った。盗塁王も含め若きバットマンの勢いは、快挙に向かって加速するばかりだ。

 ここは神宮バッティングセンターなのか? 山田が振ればホームラン。スタンドのファンも中日ナインも、ただ驚嘆するばかりだった。自身3度目の3戦連発。1試合3本は初めてだった。それでもお立ち台では「3本ともギリギリだったので、神宮球場で良かったです」と言って笑いを呼んだ。

 1打席目は技ありだった。外寄り高めスライダーを左翼席へ。「バットの先だったからフェンスに当たると思った。浮いてきたボールに少し飛びついた感じで、いい形のバッティングではなかった」と言う。本来のスイングでなくても芯でとらえ飛ばす。相手投手はたまったもんじゃない。

 四球をはさみ5回の第3打席は、高めの変化球を見逃さず仕留めた。そして6回の4打席目は甘い直球を完璧にとらえた。「まさか自分が4打数連続で打てるとは思っていなかった。30本は目標だったからうれしい」と素直に喜んだ。

 ここ3試合で5ホーマー。打ちすぎて走る機会がない。「いえ打てなくなります。そうしたら四球を選んで、走れるときに走ります」と言って笑った。今年大きく成長したのが、その足だ。昨年の盗塁数15から大幅に増やし25まで積み重ねた。スタートのタイミングや技術がついたのだが、それだけではない。

 杉村打撃コーチは「走ると周りが見えるようになる」と言う。やみくもに走るわけにはいかないからだ。状況判断が必要で視野が広がる。打撃にもいい影響が生まれ、トリプル3にも近づいた。ところが山田は「自分では(視野が広がったとは)感じない」と言う。自覚はないが、うぬぼれることもない。自信過剰にならない考え方が、さらなる伸びシロを予感させる。

 杉村コーチはもう1つ順応性、発達力も指摘した。「去年はバレンティンがいた。今年はいないからマークの度合いが違う。今年は1番手。攻め方がぜんぜん違った。それを乗り越えたからね」。5月6日には2割4分2厘まで落ち込んだ。この直後から(1)右の壁を作る(2)ゴロを意識(3)始動を早め間を取る、の3点を修正し克服した。これからもチームの優勝のために打ち続けるだけだ。【矢後洋一】

 ▼山田が自身初の1試合3本塁打を放ち、21日の第4打席から1四球を挟んで4打数連続本塁打のプロ野球タイ記録をマークした。13年バレンティン(ヤクルト)以来19人、20度目で、ヤクルトでは03年古田、バレンティンに次いで3人目。山田の23歳1カ月は74年羽田(近鉄)の20歳10カ月に次ぐ2番目の年少記録となり、二塁手では77年高木守(中日)以来2人目。

 ▼山田は20号に続いて30号もセ・リーグ一番乗り。ヤクルトでセ・リーグ30号一番乗りは11~13年バレンティン以来6人、9度目で、日本人選手では55年町田以来、60年ぶり。二塁手の30本以上は04年ラロッカ(広島)以来になるが、過去に二塁手がリーグ30号一番乗りは65年パ・リーグのスペンサー(阪急)だけ。日本人では初、セ・リーグでも初の二塁手30号一番乗りとなった。