西武が首位独走のソフトバンクに4発を浴びせ圧勝した。2回に栗山巧外野手(31)の9号ソロを皮切りに3回に中村剛也内野手(32)の2戦連発の36号2ラン、5回にエルネスト・メヒア内野手(29)が3戦連発の23号ソロと続いた。仕上げは森友哉捕手(20)が約2カ月ぶりとなる14号をプロ初の満塁弾で飾り、大量13得点を派手に彩った。勝負の9月を白星発進し、4位ロッテとのゲーム差を1に広げた。

 忘れかけていた感覚がバットから手を通して脳内へと駆け巡った。6回2死満塁。森が巽の真ん中に入ったカットボールをかち上げる。6月26日の日本ハム戦を最後に遠ざかっていた1発がプロ初のグランドスラムとなり、推定135メートルの飛距離で右翼席へすっ飛んだ。「なかなか(1発が)出なくて、すごく悔しい思いをした」とかみしめた。

 170打席も本塁打が出なかった。8月9日。練習の合間に控室で居合わせたメヒアに「中村とオレとお前で3連発だ」と声を掛けられた。「う~ん。ホームランの打ち方、もう分からないよ」と前日8日に20歳の誕生日を迎えたばかりの若武者が苦笑いで返した。チームも不振で結果最優先でバットを短く持ち続けた。「調子が良くなるまでは」。生き抜くためにポリシーを曲げるしかなかった。

 だが8月末はヒットも出なくなった。前カードの楽天戦は2戦連続先発落ち。思い直した。「長く持ってフルスイングすることが大事。ずっと長く持ってやっていたので」と握りを余すことをやめた。1打席目に中飛、2打席目に四球と無安打は21打席まで伸びたが「センターに強い当たりが打てた」と感覚は違った。

 本塁打とは難解な生きもの。中村は誰よりも定理を知っている。8月9日。森とメヒアの会話を聞き、2人がいなくなった控室でポツリと言った。「ホームランって出なくなるときがあるんですよ。僕も12年に1号を打った後、交流戦まで出なかった。いつかは打てるだろうと思っていたから、あせりはなかったですけど。不思議ですよね」。124打席ノーアーチを体感しながらも同年に本塁打王は獲得した主砲はお手本とばかりに、3回に2戦連発の36号2ランを左中間に運んだ。「会心でもない。チョイ詰まり」と笑った。

 勝負の9月を迎える。1発攻勢が最大の魅力であり、武器である。プロ野球記録の16本の満塁弾を記録する中村に対し、1本目の森は「中村さんと比べたらダメです」と遠い背中を強調した。それでも4発での白星発進に「チームの雰囲気もいいです」。Aクラス死守へ、1発でなぎ倒していく。【広重竜太郎】

 ▼森がプロ入り初の満塁本塁打。高卒2年目までに満塁本塁打を記録したのは今年の8月25日上林(ソフトバンク=2年目)以来だが、西武では1年目に打った06年3月29日炭谷以来になる。森は1年目に6本塁打しており、この1発がプロ通算20本目。高卒2年目までに通算20本以上は1年目の93年に11本、94年に20本で通算31本の松井(巨人)以来、21年ぶり。