守護神復帰プランが浮上している阪神藤川球児投手(35=四国IL・高知)が2日、首脳陣の悩みに男気(おとこぎ)で応えた。兵庫・鳴尾浜球場で8日連続となる自主トレを実施。メジャー移籍も視野に入れる呉昇桓投手(33)が退団した場合、ストッパー復帰の可能性があるが「やれと言われればやります」とキッパリ。与えられた役割を全うする考えを示した。

 頼もしい言葉だった。夕闇の鳴尾浜球場。クールダウンした藤川だが、その言葉は熱かった。

 藤川 (抑えは)僕かもしれないですし、若い選手かもしれない。若い選手はパワーもありますし、体力も気力もありますからね。僕は(個人の考えを)言えない。やれと言われればやります。

 緊急事態となった場合、抑えを託される可能性があることを聞かれ、きっぱりと答えた。

 この日、保留選手名簿から外れていた呉昇桓が、自由契約選手として公示された。現時点で虎の守護神はフリーエージェント状態。守護神問題が解決しない限り、来季の投手陣容は固定できないままだ。呉昇桓の去就決定が長引くほど、救援に回る可能性がある藤川にとっては、厳しい状況になる。だが、涙の入団会見翌日から8日連続で練習を続ける藤川は、男気をのぞかせた。

 藤川 (呉昇桓が退団に至った場合、抑えを誰がやるかは)それはその時、判断されることですよ。まだ開幕もしていない。それに判断するのは僕じゃない。適任者がやればいい。開幕間際でも、その時、力がある人がやればいい。僕が必要ないとなれば、自分に力がないということですから。

 金本監督を含め、首脳陣の苦悩が痛いほど分かる。理解できるからこそ、チームの駒になると決めている。先月25日には鳴尾浜で、香田投手コーチから先発起用の考えを伝えられた。球団は呉昇桓との残留交渉を続けるが、退団の可能性が残されているのが現状で、香田コーチは前日1日に藤川の守護神復帰プランを示唆。先発か、抑えか。不透明な展開だが、藤川の心境は、まったくと言っていいほど揺れ動くことはなかった。どんなリクエストにも応えられる自信もあるからに違いない。

 入団会見では「グラウンドでいつ倒れてもいい覚悟」とまで語った。タイガースに貢献できるならポジションは問わない。藤川は「若い人はどんどん言ったらいいんですよ」と、ポジションを狙う若手選手への配慮も忘れなかった。金本阪神が直面する守護神白紙の危機。解決するのはチームを思う藤川の熱いハートかもしれない。【桝井聡】