プレーバック日刊スポーツ! 過去の9月8日付紙面を振り返ります。2005年の1面(大阪版)は、中日との首位攻防戦で阪神岡田監督が判定巡って激怒。守護神久保田へ究極ゲキで勝利をもぎとった紙面でした。

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<阪神4-3中日>◇7日◇ナゴヤドーム

 “優勝決定級”の勝利だ。首位攻防の死闘で阪神岡田監督が燃えた。暴れた。延長9回の判定を巡っては選手をベンチに引き上げさせるギリギリの猛抗議。今季初めて向かったマウンドではクローザー久保田に「打たれろ」と開き直らせた。静かなスタイルを振り捨てての指揮で追いすがる中日を振りほどき、白星をもぎとった。きっと忘れられないナゴヤの夜になる。

 岡田監督が就任以来初めて、マウンドに向かった。大荒れの9回裏。同点に追いつかれてなお1死二、三塁のサヨナラ危機で、ありえない言葉で守護神にカツを入れた。

 「打たれろ、ムチャクチャしたれ、と言ったんや。それしかないやろ。お前の責任やない、おれが責任とる言うたんや」。

 これで開き直った久保田。代打渡辺、そして4番ウッズを連続三振に抑え、延長戦に持ち込んだ。11回表に中村豊の決勝アーチが飛び出し、激闘を制した。ナゴヤドームでは開場8年目にして初の年間勝ち越しで、首位攻防戦に1勝1敗。だが岡田監督の笑顔はナインを出迎えた、ほんの数分間だった。

 ベンチ裏の監督室で一服つけると怒りをぶちまけた。もともと紅潮していた顔は声を荒げるうちに、みるみる赤みを増した。

 「すごい試合? すごい試合に(審判が)しとるんや。それだけのことや。言うておくけど、きょうは勝ち負けやないで。勝ち負けはどうでもいい。もう野球にならんわ!」。

 白星の輝きをも覆い隠す審判の判定への不満が収まらなかった。

 2点リードの9回裏。抑えの久保田が無死二、三塁とピンチを迎えた。谷繁の緩い二ゴロで、三塁走者アレックスが本塁をつく。関本のワンバウンド送球にアレックスが手を伸ばすクロスプレー。アウトのタイミングだったが、橘高球審の両手は広がった。

 三塁ベンチをダッシュで飛び出した岡田監督はつかみかからんばかりの勢いで球審に詰め寄った。間に入った平田ヘッドコーチは“身代わり”のように暴力行為で退場を命じられた。

 納得がいかない。指揮官は右手を振り、ナインをベンチに引き上げさせた。自分もどっしり腰を下ろす。コーチ陣やナインが審判団に食ってかかり、興奮した中日ファンとはフェンス越しにやりあう修羅場が展開された。その真ん中で岡田監督は、審判の説得に耳を貸さず首を振り続けた。

 「そんなん『セーフです』言われて『そうですか』と納得できるか。こんな大事な試合、ジャッジしたから終わりってあるか!」

 直前の9回表にも本塁クロスプレーで抗議していた。関本の右前打で1点を加えたが、二塁走者中村豊は本塁タッチアウト。こちらもきわどいタイミングだったが、判定を飲み込み、逃げ切ることだけに集中していた。納得できない判定の連続に大噴火した。

 牧田球団社長がベンチでゲームの再開を説得。指揮官もようやく腰を上げたが、すっかり捨て鉢だった。「お客さんも待っているし、負け覚悟でいくしかないやろ。勝った? ああ勝ったんやな。忘れてたわ」。

 結果オーライと落ち着く心境になれない。超ど級の大荒れ試合。それでも勝利して3ゲーム差に広げた事実は大きい。

 取り付くしまのない岡田監督を、阪神牧田球団社長が懸命になだめた。「これだけファンも盛り上がっているし、気持ちを切り替えてやってもらえないかと言いました。監督の返事? それどころではありませんでした」。球団としての対応も決めかねる混乱ぶりだったが、監督への理解も示した。「怒っていた? そらそうでしょう、大事な試合でこれですから。連盟への対応はこれから考えます」。岡田監督は「文面なんて何回も出しててこうなる。(審判は)練習せい言うだけよ」と半ば投げやり。橘高球審は無言でナゴヤドームを後にした。

 ※記録と表記は当時のもの