阪神の高知・安芸秋季キャンプで1日に行われた特別ルールの紅白戦は「横田劇場」となった。横田慎太郎外野手(21)が2安打2打点と大ハッスル。死球を受けてもガッツあふれるプレーを続け、金本監督も絶賛。高卒3年目の今季は開幕スタメンを勝ち取ったが、1軍定着を果たせなかった男が、外野のレギュラー争いに再び名乗りを上げた。

 打って走って、そして当たって。がむしゃらな横田の姿勢が、虎キャンプの聖地、安芸の球場を支配した。2回1死二塁。藤浪の直球が左手首を直撃した。「痛え!」。横田劇場の開幕を告げるように、安芸の空に悲鳴がとどろいた。

 「(痛みは)全然大丈夫です。初めての実戦で少しでも存在感を出さないとと思ってやりました。(負けたら)リレーと言われていて、走りたくなかった」

 すぐに立ち上がり一塁へと駆ける。そのガッツにスタンドから拍手が湧き起こった。二塁に進むと、藤浪の投球で坂本が少しボールをこぼした隙にすかさずスタート。三塁を陥れる好走塁もみせた。

 打撃でもみせる。4回1死一、二塁では、追い込まれてから岩崎の外角スライダーを技ありの中前適時打。1点を追う最終6回1死一、三塁では、松田の初球ストレートを力いっぱい振り抜き、右前にはじき返した。

 負けたチームには、昨秋キャンプでも行われた地獄のリレーが行われる予定だった。横田の一打で「罰走免除」となり、ベンチは狂喜乱舞。金本監督も上機嫌でペナルティーを解除し、横田を称賛した。

 「いいところで執念と思いきりのよさを出してくれた。走塁は勢いつくし、死球、当たってもすぐパッと大丈夫と言ってね。ああいう選手はやっぱり(起用を)優先させたくなるね」

 キャンプ、オープン戦での猛アピールが実り、今季は開幕スタメンを勝ち取った。だが1軍戦では持ち前の力強さは鳴りをひそめ、当てにいく打撃に終始。長い2軍暮らしを強いられた。巻き返しを期す来季。金本監督も「(漫画の)主人公やね。憎めない性格もしているし、実直で。横田、江越といったところが出てくれるとね。足も使えるし」と期待を寄せる。

 全体練習終了後、安芸ドーム内で最後の1人になるまでバットを振った。横田の逆襲が始まった。【梶本長之】