梨田監督も「トリプルスリーを狙える逸材」と身体能力を見抜き、あえて好調の1軍に呼び、前日の試合で9回の代走として起用した。ロッテ涌井から初球に決めた盗塁に「驚いた。セットがうまい涌井から。実戦向き」と着目。即座にこの日の起用を決めた。初スタメンで3打席連続三振からの大仕事には「(デビュー4連続三振の)長嶋さんにはなれなかったね」。立大の大先輩を引き合いに出してから、すぐ真顔になった。「ものすごいスイングをしていた。『当たったら入っている』と話していたら、放り込んでくれた」。

 延長12回、両軍無得点での決勝2ラン。資質だけでこんな結果は出せない。操作性を重視して、左打席よりも5グラムだけ軽いバットを握るしたたかさがあった。「先輩方からも『結果を気にせず、自分のスイングだろ』と言われていた。振るのをやめたら、終わり」と田中。たぎるパワーを結果につなげる野球脳も備えている。【宮下敬至】

 ▼ルーキー田中が延長12回にプロ初本塁打となる決勝弾。新人の本塁打は楽天では11人目。田中は出場3試合目での1号で、球団では15年伊東の2試合目に次ぐ早さだ。新人のVアーチは07年嶋、16年茂木以来で、初本塁打で記録したのは茂木に次いで2人目。またプロ1号が延長戦Vアーチの新人は、初打席でサヨナラ本塁打を打った08年加治前(巨人)以来9年ぶりとなった。

 ◆立大出身選手のプロ1号 田中のように立大から直接プロ入りした選手が1年目に本塁打を放ったのは、88年長嶋一茂(ヤクルト=4本)以来。一茂の1号は4月27日巨人戦(出場7試合目、通算8打席目)だった。ちなみに一茂の父茂雄は立大から巨人入団1年目の58年に29本で本塁打王に輝き、1号は4月10日大洋戦(6試合目、22打席目)。田中の3試合目、6打席目は長嶋父子より早い。