虎がミッション・コンプリートで後半戦白星発進や。阪神が6回までにリードし、自慢の救援陣に託す必勝パターンを金本監督は宣言していたが、その狙い通りに4回2死からの3連打で逆転。1点のリードを桑原、マテオ、ドリスのリリーフ陣が守りきってみせた。大逆転Vへ-。攻撃陣、投手陣が一体となって突き進むだけだ。

 奇跡の胎動が聞こえてきた。遠く離れた広島に1歩でも近づく。金本阪神が1点を追う4回にその心意気を見せた。2死から鳥谷が中前打で出塁すると、糸原が続いた。右翼へのタイムリー二塁打で同点に追いつく。「後ろにつなぐ意識でいった。追い込まれたので、コンパクトに打とうと思って」。8番梅野が内角シュートを左前に運ぶ。一気の3連打で逆転に成功した。

 指揮官の厳命にナインが応えた。決戦前日に、こう話していた。「6回までに打って点を取る。うちのピッチャーが2点取られたら、3点取る」。勝負は6回まで。1点でも優位に立ち、7回からの必勝リレーにつなぐためだ。梅野は興奮を抑えながら言った。「下位のバッターで、ワンチャンスをモノにできたのは、チームにとっても大きい。前回、ボコボコにやられていて、歯がゆかった」。前回は敵地で2戦2敗。いずれも完敗だった。力の差を見せつけられ、このままでは終われなかった。

 中盤までにリードするというゲームプランが現実になった。桑原-マテオ-ドリスの盤石リレーがゼロを3個並べた。金本監督は逆転優勝に望みを捨てない。まだゲーム差は「7」あるが、大きな1勝だ。「交流戦明け、オールスター明けは連敗しているので、今日の勝ちはね。その(球宴)前からすると、4連勝。いい流れを持続してくれてよかった」。指揮官は忘れていなかった。交流戦、球宴明けのカードは昨年から3度すべてに連敗発進している。いい流れを生み出すためにも、今回だけは負けられなかった。

 過去にこれだけ首位に引き離され、逆転優勝したケースは球団史上ない。初戦を勝ったとはいえ、まだ奇跡の域だ。それでも何かが起きる-。そう期待させる白星だった。【田口真一郎】