反骨心か、それとも情けなさが本音だったか…。ソフトバンク内川が、4番の意地で勝利を導いた。

 同点で迎えた5回1死二、三塁。3番柳田が敬遠で歩かされた。1死満塁。西武ベンチ、そしてマウンドの十亀から「勝負」を突きつけられた。「4番としてはあの打席で前の打者が歩かされるのは情けない気持ち」。首痛の影響もあって打撃は好調とは言えない。だが、プライドと悔しさをボールにぶつけた。カウント2-1からの内角シュート。詰まりながらも、勝ち越し決勝のタイムリーが左中間で弾んだ。「意地でも走者をかえそうと思った。厳しいコース。気持ちで打った」。喜びを爆発させるわけでもなく、二進したベース上でサラリと打撃手袋を外した。

 大事な後半開幕ゲーム。V奪回が使命のチームにはこれからが苦しみの連続となる。4番であり、キャプテンを張る男にとっても状況は同じだ。「自分が打った、打たないより、チームのために何かできないか…」。悔しさも、うれしさも、押し殺すように言った。

 ちなみに、巨人時代のONは、王が歩かされて、長嶋勝負となった場面が通算146回あった。常勝を義務づけられたチームの「4番」には、情緒的になるヒマはない。【佐竹英治】