完璧エースが両リーグトップの11勝目をつかんだ。巨人菅野智之投手(27)がDeNAを8回1失点と抑え込み、セ・リーグの勝利数と防御率1位の座を守った。7月の登板では29イニング目の8回に今月初失点したものの125球の熱投で追加点を許さなかった。防御率は1・99と、1点台に突入。投球に加え打撃にも妥協しない姿で、攻守に他球団エースの追随を許さぬ独走を続ける。

 考えるよりも先に体が動いていた。マウンド上の話ではない。5点リードの7回無死走者なし。右打席の菅野が歯を食いしばり、平田の外角スライダーをたたきつぶした。中堅を大飛球が襲う。桑原の背走キャッチに阻まれたが、大歓声で東京ドームを揺らしまくった。「普通に打ちました。普通です。2ストライクになれば三振も考えましたが」と迷わず振り抜いた。大量リードで完封ペースの終盤。先頭打者の先発投手が必死の形相で変化球に食らいつき、4万4000観衆の心を大きく動かした。

 全てに最善を尽くす意識が体の芯に刻まれている。今季、30以上の打席に立った先発投手で最も三振が少ない。42打席の9三振は、2位の広島野村の32打席10三振と比較すれば三振率で約1割の差がある。そこには明確な意図が存在する。

 菅野 今年は、とにかく三振しないようにしているんですよ。バントも失敗したくない。ピッチャーが簡単に三振するなら8番との勝負が楽になってしまう。それがチームのためになるし、自分にも返ってくる。