広島西川龍馬内野手(22)が、鋭い目つきで獲物を捕らえた。5回1死一塁。巨人マイコラスの146キロに腕をたたんでバットを振り抜いた。打球は右翼席に飛び込む逆転2ラン。4回までわずか1安打に抑えられていた右腕から一振りで流れを変えた。12日に巨人菅野から放った決勝弾に続き、期待に応えた。

 三塁側ベンチ前、仲間からの手荒い祝福にも、クールな表情を崩さなかった。だが強心臓ではない。「ネクストサークルでは動いていないと両足が震えてしまう。緊張していると思われたくない」と言う。ただ、打席に入れば、狭かった視野は広がり、周囲の音も聞こえる。あとは「両腕を柔らかく、ムチのように」バットを振るだけ。

 この日手術した鈴木とは同学年。遠征出発前にはお見舞いに行き、励まし合った。まだ22歳も、4人きょうだいの長男でしっかり者。電話で弟に「ちゃらちゃらせずにしっかりやれよ」と叱咤(しった)する姿をみたチームメートもいる。本拠地の早出特打で「天才龍馬」の異名を取る打撃に磨きをかけてきた。

 緒方監督も「今日は西川が大きな1発でチームに勝利を呼び込んでくれた」とたたえた。昨年9月29日から東京ドームの巨人戦8連勝は、97年中日を超える新記録となった。マジックも1つ減らし18だ。歴史を塗り替える緒方広島には龍馬という風雲児がいる。【前原淳】

 ▼広島が2-1で巨人を下し、今季の対戦成績を16勝5敗とした。広島が巨人戦で16勝以上は60年17勝8敗1分け、64年17勝11敗に次いで53年ぶり3度目だ。巨人戦の5敗はマツダスタジアム4敗、京セラドーム1敗で、東京ドームでは7勝0敗。同一シーズンに東京ドームの巨人戦7連勝は97年中日に次いで2度目。中日は3戦目から7連勝で、シーズン初戦から東京ドームの巨人戦7連勝は広島が初めて。